◎ポーランドのMiG-29戦闘機28機をウクライナに供与するという提案は、ロシア軍の侵攻に正面から立ち向かうという西側の決意を示している。
2022年3月8日/ノルウェー、オスロの政府官邸、ポーランドのモラヴィエツキ首相(Stian Lysberg Solum/NTB/AP通信)

米国防総省は8日、ウクライナにMiG-29戦闘機を供与するというポーランドの提案を拒否した。

国防総省のカービー報道官は声明の中で、「我々はこの問題とそれがもたらす困難な物流上の課題についてポーランドや他のNATO同盟国と協議を続けていくが、ポーランドの提案が実現可能なものだとは考えていない」と述べた。

ポーランドのミグ戦闘機を提供すればウクライナ軍の士気と戦力を高めることができる。しかし、多くの専門家がNATOの兵器供与は欧州戦争のリスクを高めると懸念している。

ヌーランド米国務次官はAP通信の取材に対し、「ポーランドの発表に驚いている」と述べた。「私の知る限り、ポーランドが戦闘機をウクライナに供与するという事前の相談はありませんでした」

上院外交委員会で8日にウクライナ危機について証言する議員もAPに「今知った」と述べている。

ゼレンスキー大統領はNATOに戦闘機の供与を懇願しており、「ポーランドがウクライナにミグを供与し、その代わりに米国が中古のF-16戦闘機をポーランドに供与する」という案が示された。

ウクライナ空軍のパイロットはソビエト時代の戦闘機の操縦に慣れている。

ポーランド外務省は声明で次のように述べている。「ミグはドイツのラムシュタイン米空軍基地に届けられ、同時に、ポーランドは米国に相応の能力を持つ中古戦闘機を提供するよう要請する...」

またポーランド外務省は、旧ソ連の戦闘機を所有する他の同盟国にも同様の対応をとるよう求めた。

旧ソ連圏のNATO加盟国であるブルガリアとスロバキアもソ連の戦闘機を保有している。

米国防総省の提案却下は、ポーランドと他の東欧諸国の支援に焦点をあてる会談に冷や水を浴びせることになった。会談にはハリス副大統領が出席する予定。

ポーランドのミグ28機を供与するという提案は、ロシア軍の侵攻に正面から立ち向かうという西側の決意を示している。ただし、一部の専門家はMiG-29で戦況を打開できる可能性は低いと指摘している。

MiG-29の性能はロシア空軍の戦闘機よりはるかに劣り、露戦闘機やミサイルの餌食になる可能性がある。

またロシアはウクライナに対する兵器供与を戦争に参加したと見なし、ポーランドに報復する可能性がある。さらに、東欧の危機が高まる中でウクライナにミグを供与すれば、ポーランド軍の戦力低下は避けられない。

ロシアがポーランドのミグ供与をNATOの供与と見なせば、緊張をさらに高めることになる。

米国は今のところ、ウクライナに直接戦闘機を供与する予定はない。

米国とポーランドの当局者は、NATOとEUは戦争に直接関与していないという”見せかけの状態”を維持するために、様々な選択肢を検討してきた。そのひとつがポーランド外務省が8日に発表したミグの供与である。

AP通信によると、当局者たちはポーランドのミグをドイツのラムシュタイン米空軍基地に移送し、そこでウクライナ空軍の模様に再塗装して飛行させることを検討していたという。ウクライナ人パイロットは「非NATO加盟国」の領空を経由し、ウクライナに入る。

経由地は公表されていないが、米国と良好な関係にあるコソボやその他のいくつかの国が候補に挙がっていたと伝えられている。

ポーランド外務省はF-16戦闘機の供与を米国に求めているが、これを認めれば、F-16の供与を待っている台湾を待たせることになり、議会は恐らく承認しないだろう。

ウォレス英国防長官は8日、ポーランドがミグを供与した場合、「ポーランドは”結果”に直面する可能性がある」と指摘したうえで、同国を支持すると述べた。

ウォレス国防長官はスカイニュースの取材に対し、「イギリスはポーランドを保護し、彼らが必要とするものを提供する」と述べた。

ノルウェー首相と会談したポーランドのモラヴィエツキ首相は8日、「兵器の供与にはNATO加盟国の全会一致が必要」と述べた。「私たちはラムシュタイン基地に戦闘機を届けることができます。しかし、私たちは戦争当事者ではないため、独自に動くことはできません」

2022年3月8日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジョー・バイデン大統領(AP通信)
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