◎確認された症例は今のところ1件のみだが、州政府は対策に万全を期すとした。
ニューヨークのタイムズスクエア(Getty Images)

ニューヨーク州政府は9日、市内でポリオウイルスが蔓延しているという証拠が確認されたため、非常事態を宣言した。

保健当局によると、NY市と隣接する4つの郡の下水サンプルからポリオウイルスが検出されたという。

確認された症例は今のところ1件のみだが、州政府は対策に万全を期すとした。

米国は1955年にポリオワクチン接種を開始し、1979年に根絶を宣言。この10年、症例は確認されていなかった。

ポリオ(急性灰白髄炎)は脊髄性小児麻痺とも呼ばれ、5歳以下の子供がかかることが多く、麻痺などを引き起こし、死に至ることも珍しくない。死亡率は地域によって異なるがワクチン未接種の小児で2~5%、成人は15~30%、妊婦はさらに高いと推定されている。

ポリオに治療薬はないが、ワクチンで予防できる。糞便を介して広がるため、下水設備の整っている国では拡大しにくい。幼児の便を処理する保護者、医療従事者、介護施設職員は特に注意が必要。

保健当局によると、今回の非常事態宣言はワクチン接種率を高めることを目的としている。NY市の一部地域のワクチン接種率はかなり低いようだ。

保健当局はワクチン接種率を現在の州内平均約79%から90%以上に引き上げることを目指すとした。

専門家によると、ポリオの症例が1件確認された地域には数百人の感染者がいる可能性が高いという。

米国ではポリオワクチン接種が小児期の定期接種プログラムの中に含まれている。CDC(疾病予防管理センター)によると、全国の幼児の約93%がワクチン接種済み。

州政府はロックランド郡で7月にワクチン未接種の男性がポリオに感染したことを受け、下水調査を開始した。

調査の結果、近隣のナッソー郡の下水サンプルからポリオウイルスが最初に検出された。その後、オレンジ郡、サリバン郡、ニューヨーク市5区でも陽性反応が出た。

ホークル(Kathy Hochul)州知事は9日の声明で、「ワクチンを接種しよう」と呼びかけた。NYはコロナとサル痘でも非常事態を宣言したため、ウイルス系の宣言はこの2年で3回目となった。

これにより、ポリオに感染するリスクの高い医療従事者、助産婦、介護労働者などがポリオワクチンを接種できるグループに追加された。接種済みの人は対象外。

ソマリアのチャイルドヘルスセンター、ポリオワクチン接種の様子(Ben Curtis/AP通信)
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