米下院議長ナンシー・ペロシ女史

7月29日、米国下院は、コロナウイルス感染者および死者数の増加に全く歯止めがかからないため、議員に対し改めてマスクを着用するよう命じた

下院議長のナンシー・ペロシ女史は、「議会(議事堂)でのマスク」という新しいルールを破る者は、いかなる理由があろうと抹消されると警告。呼吸器等の疾患でどうしてもマスクを着用できない場合は、それを証明する資料の提出も合わせて求めた。

7月28日、テキサス州のルーイ・ゴーメルト下院議員(共和党)は、議事堂での公聴会中、約5時間に渡ってマスクとSay goodbye。翌日、コロナウイルス感染が判明し、ペロシ下院議長の逆鱗に触れた。

その日、ゴーメルト下院議員はトランプ大統領と大統領選挙の関係で行動を共にする予定だったが、キャンセルした。

カリフォルニア州の民主党員を務めるペロシ女史は、29日晩の記者会見で、「マスクを着用していない議員は、議会から去ってもらうことになるだろう。マスクを外していいのは顔を洗う時、食事中、ベッドの中だけだ。国民に感染リスクを訴えている我々が模範にならなければならない」と警告した。

さらに、「全議員、関係者やスタッフが、議事堂およびその周辺エリアにいる人々の命、安全、健康を尊重する証として、このルールを必ず守ってくれると確信している」と付け加えた。

ペロシ女史は、マスクレス状態で無節操に喋る、行動する、歩き回ることは重大な礼儀違反であると考え、ルールを守らない者は下院議長の権限で抹消する(できる)と述べた。

アメリカ合衆国議会の追跡(GovTrack.us)によると、28日の公聴会に出席した10名(民主党員3名、共和党員7名)がPCR検査で陽性反応を示した。感染経路については現在調査中であり、保健当局は下院議会でクラスターが発生したと発表した。

クラスターボムの主犯格と疑われている66歳のゴーメルト氏は、29日にトランプ大統領とテキサス州へ向かう予定だった。同氏はホワイトハウスの対策チームによるPCR検査を受診し、陽性が判明したという。

ゴーメント氏は議事堂でマスクとSay goodbyeしたのち、自分の事務所に戻り、スタッフや関係者と打ち合わせを行っていた。なお、アメリカのメディアによると、事務所ではしっかりマスクを着用していたという。

ゴーメント氏はテキサスステーションKETKの取材(オンライン)に対し、「私が感染したことは致し方ないと思う。私は議事堂でマスクを着用しなかったが、あれは正しい判断だった」と述べた。

共和党下院議員の中でマスクレスを押し通す者は計24名。ゴーメント氏もその一人、今回、改めて「マスクを着用しないとコロナウイルスに感染するぞ」というメッセージを国民に送ったのである。

ツイッターに投降された写真には、ゴーメント氏のすぐ近くに立つ男性の姿が写っていた。司法省によると、この二人もPCR検査を受ける予定だという。

国民にマスク着用をお願いしつつ、自分たちはそれとSay goodbyeする自分勝手な行動に非難が集中しており、共和党は火消しに追われている。

ペロシ下院議長、下院でのマスク着用ルールを発表

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トランプの意見は役立たず

7月28日、ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師は、トランプ大統領が「マスクは役に立たない」と主張する動画をSNSで共有したことに対し、「役立たず」とコメントした。

トランプ大統領がツイッターやフェイスブックで共有(リツイート)した動画は、コロナウイルスの治療に効果のない薬物を宣伝していた。

7月27日、トランプ大統領は「最前線の医師」と呼ばれるグループの動画を共有した。動画の内容は、ブラジルのボルソナロ大統領も愛飲するヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)こそコロナウイルスを封じ込める治療薬と宣言するものであり、マスクとロックダウンは無意味と述べられていた。

ツイッターとフェイスブックはこの動画は削除し、「誤った情報」として警告を表示したものの、既に1,700万人以上が視聴済みだった。

動画に出演していた者たちは、「ファウチと民主党がトランプ大統領を痛めつけるために、コロナウイルスの感染拡大を推し進めている。また、治療薬の発明を妨害し、国民を死に追いやった」と主張していた。

動画に強制出演(写真のみ)させられたファウチ医師は記者団に対し、「いかなる理由があろうと、国民に誤った情報を発信してはならない」と警告した。

また、動画の中で触れられていたトランプ大統領に対する反逆行為、陰謀説を真っ向から否定し、「私は国民の皆さんにマスクを着用してほしい。もし役立たずの動画を見てマスクなど必要ないと感じたら、それは大きな間違いだ

「感染予防を行ううえで何が最も大切かは、これまで何千回も述べてきた通りである。ホワイトハウスコロナウイルス対策チームを代表して、改めてマスク着用をお願いしたい」と述べた。

トランプ大統領がヒドロキシクロロキンを宣伝することに対しファウチ博士は、「少なくとも、世界中の優秀な科学者や研究者、研究機関、大学などが、ヒドロキシクロロキンにコロナウイルスを防ぐもしくは治癒する効果はない、と断言している。役に立たない薬を飲むべきではない」と切り捨てた。

先月、米国食品医薬品局(FDA)は、改めてコロナウイルス患者にヒドロキシクロロキンを投与しないよう警告している。

世界保健機関(WHO)、FDA、世界中で実施された数百の研究の結果、ヒドロキシクロロキンにはトランプ大統領の言うような効果はなく、また、治療に活かせるような証拠はひとつも見つからなかった。

感染拡大の続くアメリカでは、21の州が「レッドゾーン(危険領域)」、28州の州が「イエローゾーン(注意領域)」にあると発表された。

なお、バーモント州のみが「グリーンゾーン」、10万人当たりの感染者数が10人未満だった。

トランプ大統領は27日にファウチ博士を批判するツイートをリツイートした。これに対し記者団から、「ファウチ医師が嫌いなのか?」と質問されると、「私と彼はうまくやっている」と主張した。

また、ファウチ医師がメディアやSNSで人気を集めていることに対し、「君たちはファウチを好きだと言い、私のことは嫌いだと言う」と述べると、記者たちは皆ウンウンとうなずいていた。

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