▽ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
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国際組織犯罪に対抗するグローバル・イニシアティブ(GITOC)は8日、米国が中米ハイチの主要ギャングを「外国テロ組織」に指定したことで、資金や人道援助が制限され、ギャングを勢いづかせる可能性があると警告した。
米国務省は先週、ハイチで猛威を振るう2つのギャングを「外国テロ組織」と「国際テロリスト」に指定した。
対象となったのは首都ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と中部アルティボニット県に拠点を置く「グラン・グリフ」。
米財務省もグラン・グリフを制裁リストに追加。ヴィヴ・アンサムはすでにリスト入りしていた。
ルビオ(Maro Rubio)国務長官は声明で、「両組織はこの地域における米国の国家安全保障上の利益に対する直接的な脅威である」と指摘。両組織に物質的支援や資源を提供すれば刑事責任に問われ、米国への入国拒否や国外退去につながる可能性があるとした。
GITOCは8日、この指定が最も脆弱な子供、女性、高齢者などを窮地に追い込む可能性があると警告した。
それによると、国内で活動する一部のNGOはギャングの許可を得て人道支援を輸送したり、ギャングの支配地域に届けているという。
この指定で米国だけでなく外国の団体もギャングに近いNGOへの援助を打ち切れば、市民はギャングにさらに依存する可能性があるとしている。
また、国際的な企業も米国の指定に抵触するリスクを回避するため、ハイチから撤退する可能性があるという。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられるギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ヴィヴ・アンサムと対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。
一連の暴力とギャング間抗争により100万人以上が住居を失い、その多くが避難所に身を寄せている。
ハイチで活動する多くのNGOも今週初め、米国のテロ指定が最も弱い立場の人々を傷つける可能性があると警告していた。