加熱する抗議デモ、市民の怒りが爆発した

ジョージ・フロイド氏がミネアポリスの警察官「デレク・ショービン容疑者」に殺害されてから6日目の夜。それに抗議するデモ参加者たちの怒りが各地で爆発した。

過激なデモ活動を抑えるべく、40近くの州で夜間外出禁止令が発動された。しかし、参加者たちはそれを無視し、怒号と爆発音と炎が街を飲み込んだ。

ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ロサンゼルスなどの大都市で治安維持活動を行った機動隊は、催涙ガスと唐辛子弾を発射し群衆の分散を試みたが、この行為が相手の怒りに油を注いだ。

デモ参加者たちは火炎瓶や投石で反撃を開始、事態は収束どころか激しさを増したという。国内緊急事態に対処すべく、15の州に約5,000人の国家警備隊が動員された。

今回の事態を受け国家警備隊は声明を発表。「州および地方の法執行機関は、都市の安全を保障する義務がある」とコメントした。

ホワイトハウス周辺でも大規模なデモ活動が発生した。シークレットサービスによると、トランプ大統領を一時地下バンカーに退避させたことが明らかになった。

BBCアメリカ支局のニック・ブライアント氏は、「マーティン・ルーサー・キング暗殺以来の大規模な抗議活動が発生している」と述べた。

5月31日の夜から始まったデモ活動は75以上の都市に拡散。ジョージ・フロイド氏が白人警官に公衆の面前で殺された今回の事件を受け、ミネアポリス市における過去の同種事件に対する市民の怒りは遂に爆発した。

ジョージ・フロイドの死/爆発する警察車両と怒れる抗議者たち
トランプ大統領vsツイッター社/正義の夜明け

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暴力や略奪は絶対に許されない

警察車両は破壊され、各地でデモに関連する発砲事件が相次いだ。また、これに乗じた暴力事件や略奪行為が各地で横行、市民は眠れぬ夜を過ごした。

フィラデルフィアではパトカーが破壊され、今回の事件とは全く関係のない商店が襲撃を受けた。略奪者たちは商店を破壊しつくし、商品を強奪、火を放った。同じような事案がカリフォルニア州サンタモニカでも報告されている。

これらの略奪行為に対しトランプ大統領は、「フィラデルフィアの法と秩序が失われた。彼らはデモ活動をおとしめる略奪者である」とツイートした。

暴動の発端となったミネアポリス市では、トラックが道路の障壁に突進、運転者が逮捕された。ソーシャルメディアに投稿された映像では、運転手が何十人もの人々に引っ張り出される様子が写っている。ミネソタ州のティム・ウォルツ知事は、「ドライバーの動機は不明、もしトラックがデモ参加者の列に突っ込んでいれば、大変なことになっただろう」とコメントした。

アトランタ、ボストン、マイアミ、オクラホマシティなどでも大規模な抗議活動が相次いだ。なお、デンバーでは何千人もの人々がコロラド州議会議事堂まで平和的に抗議活動を行った

アトランタでは、大学生に過度な武力を行使したとして、機動隊員二名が解雇された。

ジョージ・フロイド氏の死は大変悲惨なものであり、非武装、非抵抗の市民を惨たらしく殺害したデレク・ショービン容疑者と、その状況を黙って見ていた他の警察官が罪に問われるのは当然である。

ミネソタ州では、黒人に対する警察官の非道な行為が続発している。2015年には、ミネアポリスの警察官が逃走中のジャマール・クラーク氏を射殺、逮捕された。

2016年、ミネソタ州ファルコンハイツのフィランド・カスティーリャ氏が警察官に銃撃され死亡。逮捕されたジェロニモ・ヤネズ容疑者は裁判で無罪を言い渡された。

2017年、ミネアポリスの警察官がジャスティン・ダモンド氏を射殺。モハメド・ノール容疑者は禁固5年の刑に処された。

警察官による非人道的な行為、黒人に対する差別的な行為は数えきれないほど発生していたが、今回のような大規模デモに至ったことはなかった。しかし、フロイド氏の処刑されるシーンがソーシャルメディア上に拡散され、人々は遂に怒りの声を上げた。

今回、ここまでデモ活動が大規模化した主な理由は以下の通り。
ミネアポリス警察の長、容疑者の上司が雲隠れしている。
●殺人現場に立ち会った他の警察官が逮捕されていない。
●過去の事件の教訓が全く活かされていない。この責任は警察の長にある。
●アメリカ全土が白人至上主義に毒されており、それに対する黒人たちの怒りが爆発した。

人々が怒るのも当然である。容疑者は自分の犯した罪を償わなければならない。事態を放置した同僚たちも同罪。さらに、署内の改革を行わなかった長、容疑者の上司も解雇が妥当。仮に改革を行っていたとしても、今回の事件を防止できなかったことは事実。その責任はボスにあるのだ。

しかし、抗議デモに便乗して略奪や暴力行為を行う”略奪者”たちも許してはならない。略奪者たちはフロイド氏の死を利用し、犯罪行為を正当化している。襲撃された商店の店主は、”意味もなく”大切な店を破壊され、資産を奪われ、火を放たれた。これはフロイド氏殺害に匹敵する暴挙と言っても過言ではない。

一部の犯罪者たちが略奪行為に走ると、平和的にデモ活動を行っている参加者たちも”同類”と見なされる。トランプ大統領は事態がさらに悪化すれば、”軍の投入も辞さない”とコメントしている。

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