◎国立戦争記念館前の敷地に駐車した一部のトラックはナチスの旗を掲げ、トルドー首相を「独裁者」と呼んだ。
2022年1月29日/カナダ、首都オタワの議会議事堂近く、コロナワクチンの義務化に反対するデモ(Adrian Wyld/The Canadian Press)

1月29日、カナダの首都オタワで数千人の市民がコロナワクチンの接種義務化、マスクルール、封鎖措置に抗議した。

国立戦争記念館前の敷地に駐車した一部のトラックはナチスの旗を掲げ、暴徒化した抗議者はカナダの英雄テリー・フォックスの像に落書きをし、厳しく非難された。

オタワのワトソン市長は、「暴徒は戦没者の墓と伝説のランナーを汚した」と怒りのツイートを発信した。

抗議者たちはワクチンの義務化をファシズムと比較し、ジャスティン・トルドー首相を「独裁者」と呼んだ。カナダ放送協会(CBC)によると、議会議事堂前に押し寄せた多くの大型トラックが反トルドーの旗を掲げていたという。

幼い頃に骨肉腫で右足を失い、カナダ全土で募金活動を行うために走った国民的英雄の像には、「自由を義務付ける」と書かれた看板、落書き、卍の旗などが取り付けられていた。

トルドー首相は「テリーは科学を信じ、第三者を助けるために命を捧げた」というテリー・フォックス財団のツイートをリツイートした。

オタワの警察当局はトラック運転手の団体が暴動を引き起こす可能性があると市民に警告し、市中心部に近づかないよう促している。一部の議会議員は暴徒が企業や店舗だけでなく、議員の自宅を襲う可能性があると警告した。

一連の抗議は、米国とカナダを行き来するトラック運転手にワクチン接種を義務付ける法律が施行されたことで本格化した。

接種の義務化に反対するGo Fund Me(資金を提供して!)キャンペーンは29日の時点で約10万人から資金を集め、額は500万ドル(約5.8億円)を突破した。

米国の総合格闘家で共和党員のジョー・ローガン氏、イギリスのコメディアン兼俳優のラッセル・ブランド氏、米フォックスニュースのキャスター、ドナルド・トランプ前大統領の息子などがキャンペーンの支持を表明しており、反トルドー抗議は首都オタワに進出した。

CBCによると、警察は極右グループのデモ参加を想定し、警備を強化する予定だという。

カナダのワクチン接種率はG7の中で最も高く、人口の約79%が2回接種を終えている。ケベック州の州首相はワクチン未接種者に税金を科すと示唆し物議を醸したが、CBCによると、支持率は低下するどころか逆に上昇したという。

トルドー政権の政策に反対する保守派の議員はGo Fund Meと抗議デモを称賛している。

保守系メディアの取材に応じた保守派の議員は卍の旗を持った抗議者と握手し、コーヒーをご馳走した。保守党のエリン・オウトゥール党首は現地でトラック運転手を応援したと伝えられている。

元駐カナダ米国大使のブルース・ヘイマン氏はツイッターに、「民主主義への攻撃は米国だけでなく他国でも起こっている」と投稿した。「卍の旗は憎しみの象徴であり、それがカナダで使われたことを残念に思います」

連邦警察によると、30日にも同様のデモが予定されており、抗議者は10,000人を超える可能性があるという。

CBCの取材に応じたオタワのトラック運転手は、「私はどこにも行けない」と述べ、トルドー首相を非難した。「私はレストランに入れません。ボウリング場にも入れません。映画も見れません。政府は選択する権利を侵害しています」

抗議に参加した女性は、「トラック運転手たちはワクチン義務化が解除されるまで議会を取り込み続けるだろう」と語った。

カナダも他の主要国と同じく、インフレ、パンデミック、燃料価格の高騰、労働力不足などの問題に悩まされており、トラック運転手の抗議はサプライチェーンに影響を与える可能性がある。

カナダの経済はトラック運転手が米国から輸送する物資に大きく依存しており、トルドー首相はトラック運転手を必須労働者と見なし、一部の義務化措置を免除していた。

カナダの輸送情報をまとめるカナディアン・トラッキング・アライアンスによると、国境を越えて働くトラック運転手約12万人の85~90%がワクチン接種を終えており、オタワに集まったトラック運転手の大半は業界関係者ではないという。

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