◎ジョー・バイデン大統領は、賃金の引き上げは国民の生活を改善し、世界におけるアメリカの競争力を回復すると主張しており、多くの進歩的な民主党員もこの考えに賛成している。
2021年5月21日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジョー・バイデン大統領と名誉勲章を授与された元陸軍大佐のラルフ・パケット氏(AP通信/Alex Brandon)

米主要メディアによると、ジョー・バイデン大統領は様々な問題に直面している企業に対し、賃金の引き上げを要求したという。

アメリカの企業は鉄鋼、合板、プラスチック、アスファルトなどの高騰に苦労しているが、1年間の失業もしくは事業の閉鎖に直面した労働者たちは、企業の業績の良し悪しに関わらず、低賃金の受け入れを拒否する傾向にある。

ABCニュースによると、ホワイトハウスの非公開資料に含まれていた企業に対する賃金の引き上げ勧告は、コロナウイルスの混乱から立ち直りつつあるアメリカ経済の慎重な活動再開を緩和する狙いがあるという。

ホワイトハウスの当局者はABCニュースの取材に対し、「特定の労働者の賃金の引き上げを望んでいるわけではない」と主張した。しかし、バイデン大統領は最低賃金の引き上げを政権の最重要公約のひとつに掲げており、企業の生産活動をプッシュする経済対策予算(提案含む)は3.5兆ドル(約380兆円)に達する予定である。

バイデン大統領は、賃金の引き上げは国民の生活を改善し、世界におけるアメリカの競争力を回復すると主張しており、多くの進歩的な民主党員もこの考えに賛成している。一方、共和党は、バイデン大統領の政策は経済に深刻な影響を与えると同時に、インフレを加速させると警告している。

専門家は、「バイデン大統領の企業生産を後押しする各種政策は、来年の上院選挙に大きな影響を与える可能性が高い」と指摘した。高所得者層(主に経営者)はバイデン大統領の賃金と法人税率引き上げに基本的に反対しているが、人口の大多数を占める低中所得者層の大半は賛成していると伝えられている。

ホワイトハウスのジャレッド・バーンスタイン経済顧問は、「政府はコロナ禍で困難な状況に置かれた低中所得者層を助けるために行動する」と述べた。「医療従事者、インフラ関係の労働者、家族のために睡眠時間を削って働いている人々、そしてコロナ禍で苦しい思いをした人々は必ず報われます」

2021年5月13日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジョー・バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領(AP通信/Evan Vucci)

ニューヨーク連邦準備銀行は今月、大学を卒業していない労働者の年収が過去1年間で約26%増加したと報告した。報告によると、対象の平均年収は61,483ドル(約670万円)で、1年前から12,700ドル以上(約140万円)増加したという。

バイデン政権は、4月の消費者物価が前月から0.8%上昇したことを一時的なものと見なしている。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)が先日公開した議事録によると、アメリカ中央銀行(12行)はインフレの抑制とその他の様々な影響を考慮し、予定より早く金利を引き上げる可能性があるという。

毎月の雇用、賃金、そしてインフレのデータは経済の再開に合わせて変動するため、1カ月のデータでアメリカの経済状況を予測することは難しい。バイデン大統領の補佐官は、経済データは3か月平均でチェックすると述べており、現状は上向きと主張した。また、コロナワクチンの接種数がさらに増えることで、より多くの業種が本格的に活動を再開できるだろうと述べた。

一方、共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首は「数兆ドルの支出は必ず自分たちに跳ね返ってくる」と警告している。マコーネル上院少数党首は以前、週の失業手当(300ドル)と1.9兆ドル(約200兆円)のコロナ救済法は経済に深刻な影響を与えると述べた。

共和党は失業率が低いにもかかわらず賃金の引き上げを求める圧力が高まっていることに警戒感を示している。4月末時点のアメリカの失業率は6.1%まで回復した。

トランプ政権で経済顧問を務めたフーバー研究所のタイラー・グッドスピード特別研究員はABCニュースのインタビューの中で、「私たちは未知の海域を航海している」と述べた。「過去1年の間にホワイトハウスが投資した予算は6兆ドルを超えています...」

グッドスピード特別研究員は、「賃金を引き上げる最善の方法は失業率をパンデミック前の3.5%に近づけることであり、最低賃金の引き上げではない」と述べた。「労働力の不足を補うための投資は企業の再雇用を促し、給与の引き上げにもつながります」

共和党は週300ドルの連邦失業手当は、「失業していた方がより多くのお金を得られる」という誤った考えを助長し、働く意欲を阻害すると主張している。

サンフランシスコ連邦準備銀行のエコノミストが今月発表した分析によると、2021年初頭の失業者28人のうち7人が求人情報を当局から入手し、そのうち1人は業種に問題があるとして求人を辞退したという。このデータだけで人々の働く意欲が阻害されていると証明することはできないが、エコノミストは失業手当が労働者の心理に何かしらの影響を与えた可能性は否定できないと述べた。

一方、ミネソタ大学の労働経済学者、アーロン・ソジャーナール教授は、「失業手当を廃止すると家族の収入が減り、コロナ禍の初期に発生した食糧危機につながる可能性がある」と警告した。「平均給与は確かに上昇しました。しかし、それだけで低中所得者層全員の生活が改善したと判断するべきではありません...」

2021年5月20日/ワシントンD.C.ホワイトハウスのイーストルーム、民主党のナンシー・ペロシ下院議長と握手するジョー・バイデン大統領(AP通信/Evan Vucci)
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