◎共和党はバイデン大統領のインフラ計画の予算だけでなく、法人税の引き上げ(21%→28%)やキャピタルゲイン税の引き上げなどに強く強く反発している。
2021年5月6日/ルイジアナ州レイクチャールズ、インフラ計画の必要性を訴えるジョー・バイデン大統領(AP通信/アレックス・ブランドン)

5月6日、ルイジアナ州レイクチャールズの老朽化した橋のたもとに立ったジョー・バイデン大統領は、約2.3兆ドル(250兆円)のインフラ計画「アメリカン・ジョブズ・プラン」を共和党と一緒に成立させると述べた。

バイデン大統領は記者団に対し、「共和党と民主党の議員が積極的に話し合っていることを嬉しく思う」と述べた。「私はアメリカのインフラスタラクチャーを回復させるこの計画の速やかな議会通過を望んでいます。私は待ちません。しかし、共和党との話し合いには喜んで応じるつもりです」

ABCニュースによると、バイデン大統領は民主党のチャック・シューマ―上院院内総務とナンシー・ペロシ下院議長、共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首とケビン・マッカーシー下院少数党首を5月12日にホワイトハウスに招き、インフラ計画について話し合う予定だという。バイデン大統領が共和党のリーダーをホワイトハウスに招くのは初めて。

マコーネル上院少数党首は6日の記者会見でバイデン大統領に歩み寄る姿勢をほんの少し見せたが、5日の演説ではインフラ計画を激しく非難することに集中していた。

マコーネル上院少数党首は6日の会見で記者団に対し、「私たちはバイデン政権を穏健な政権に変えるために行動する」と述べた。「私はバイデン大統領に中道的な立場で政治を主導してほしいと考えています。共和党はそれを実現するための話し合いには喜んで応じるつもりです」

しかし、マコーネル上院少数党首は5日、「私はバイデン政権の行動を阻止することに集中している」と述べ、インフラ計画の議会通過を阻止すると約束した。「国民はホワイトハウスの現状を理解しなければなりません。バイデン大統領は昨年の選挙で勝利しました。しかし、政治を主導しているのは極左のバーニー・サンダースです。サンダース政権はアメリカを社会主義国に変えようとしています」

社会民主主義者のサンダース上院議員はバイデン大統領のインフラ計画を猛プッシュしている。

2021年5月3日/ケンタッキー州ルイビルのルイビル大学、共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首(USAToday/Michael Clevenger/Courier Journal)

バイデン大統領は5日午後の会見でマコーネル上院少数党首の発言について記者から質問を受けた。「マコーネル上院議員はオバマ政権の法案を何度も阻止しました...私は共和党と話し合えることを楽しみにしています」

マコーネル上院少数党首は2010年の議会選挙で当時のオバマ政権の2期目を阻止すると共和党支持者に約束したが、計画は見事に失敗し、民主党の法案を議事妨害(フィリバスター)で何度も阻止することで憂さを晴らした。

議事妨害は上院の野党勢力に与えられた権利のひとつで、法案の採決を好きなだけ引き延ばすことができる。議事妨害を阻止するためには、議事妨害停止決議案で賛成を60票以上集めなければならないが、現在の上院の勢力(民主50ー共和50)で可決することはほぼ不可能である。

しかし、予算法案に関しては特別な予算プロセスを行うことで議事妨害の影響を受けずに採決を行うことが可能になる。バイデン大統領はこのプロセスを使うと示唆している。

共和党はバイデン大統領のインフラ計画の予算だけでなく、法人税の引き上げ(21%→28%)やキャピタルゲイン税の引き上げなどに強く強く反発している。なお、法人税を21%まで引き下げたトランプ前大統領は4月の声明でバイデン大統領の計画を嘲笑し、「歴史上最大の自傷行為として記録されるだろう」と述べた。

一部の民主党員もバイデン大統領の法人税引き上げ計画に反対している。ジョー・マンチン上院議員は28%ではなく25%にするべきと主張し、話し合いにはいつでも応じると述べた。民主党の上院議員が1人でも離反すれば、法案は却下される可能性が高い。

共和党は先月、5,680億ドル(約61兆円)のインフラ計画を提案し、「超党派のプラン」と宣伝したうえで、バイデン大統領に妥協するよう求めた。

マコーネル上院少数党首は6日の会見の中で、「ホワイトハウスは共和党のインフラ計画をプランBと考えるだろう」と述べた。「民主党は話し合いが成立しなかった場合、プランBに移行する検討を開始します」

「民主党は2.3兆ドルの巨大法案ではなく、共和党と一緒にプランBについて話し合うことになるでしょう。バイデン大統領の計画に反対する議員はたくさんいます。超党派はインフラストラクチャ―の改修には同意しますが、法人税の引き上げには決して同意しません」

アメリカン・ジョブズ・プランにはインフラだけでなく、教育や介護に関する予算も盛り込まれている。

2021年5月6日/ルイジアナ州レイクチャールズ、インフラ計画の必要性を訴えるジョー・バイデン大統領(AP通信/アレックス・ブランドン)

アメリカン・ジョブズ・プランの要点

<高速道路とその他の道路の改修費用:1,150億ドル(約12.8兆円)>
ホワイトハウスによると、道路約32,000km、重要な橋、その他の約10,000の小さな橋を改修する予定だという。

<公共交通機関の改修:850億ドル(約9.4兆円)>

<貨物鉄道の改修:800億ドル(約8.9兆円)>
北東部の貨物路線の改修がメインになると伝えられている。

<電気自動車関連のインフラ整備:1,740億ドル(約19兆円)>
電気自動車用の充電ステーションを全国に50万カ所建設する。

<空港の改修:250億ドル(約2.8兆円)>

<河川と港の改修:170億ドル(約1.9兆円)>

<高速道路建設の影響を受けたコミュニティに対する補償:200億ドル(約2.2兆円)>

<自然災害対策強化:500億ドル(約5.5兆円)>

<鉛水道管の交換と下水道システムの改修:1,110億ドル(約12兆円)>

<5Gを含む高速ブロードバンドの構築:1,000億ドル(約11兆円)

<全国の電力網の整備とクリーンエネルギーへの移行:1,000億ドル(約11兆円)>

<低所得者向けの手頃な価格の住宅約200万棟の建設と改修:2,130億ドル(約24兆円)>

<学校の建設と改修:1,000億ドル(約11兆円)

退役軍人病院と診療所の整備:180億ドル(約2兆円)

<連邦政府の施設の改修:100億ドル(約1.1兆円)>

<介護サービスの拡充:4,000億ドル(約44兆円)>

<クリーンエネルギーなどの開発プロジェクトへの投資:1,800億ドル(約20兆円)>

<クリーンエネルギー関連の製造業への投資:3,000億ドル(約33兆円)>

<新たな労働力の開発:1,000億ドル(約11兆円)

法人税率を21%から28%に引き上げる

◎企業に21%のグローバル最低税を課し、節税対策を打ち負かす。

◎企業に15%の最低税を課す。

◎化石燃料業界に与えられた税制上の優遇措置を廃止する。

◎大企業に対するIRS監査を強化する。

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