◎ジョー・バイデン大統領はまもなく退任するドイツのアンゲラ・メルケル首相をホワイトハウスに招き、主要な対ロシア政策で同意に達した。
2021年7月15日/ワシントンD.C.ホワイトハウスの大統領執務室、ジョー・バイデン大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相(エヴァン・ヴッチ/AP通信)

7月15日、ジョー・バイデン大統領はまもなく退任するドイツのアンゲラ・メルケル首相をホワイトハウスに招き、主要な対ロシア政策で合意に達した。

バイデン大統領は首脳会談後の記者会見で、ロシアからドイツに天然ガスを送るノルドストリーム2パイプラインに懸念を表明したと明らかにしたが、「両国は天然資源を政治の武器として利用しないことに合意した」と述べた。

また両首脳は、中国の反民主的な行動に反対することでも合意した。

ドナルド・トランプ前大統領との熱烈な関係で注目を集めたメルケル首相は、演説の中でバイデン大統領を「親愛なるジョー」と何度も呼んだ。

メルケル首相は記者に「トランプ前大統領とバイデン大統領との関係を比較するよう」求められ、「全ての合衆国大統領と協力してきた」と笑顔で答えた。「今日はとてもフレンドリーに交流することができました」

しかし、今回の首脳会談は穏やかに進んだように見えたが、米独関係は新たな領域に入る可能性が高いと信じられている。ドイツの新首相は9月末の総選挙で決まる予定。

アメリカは長い間、露独のノルドストリーム2プロジェクトは大陸のロシアへの依存度を高め、ロシアが脆弱な東ヨーロッパおよび中央ヨーロッパの国々、特にウクライナに政治的圧力をかける恐れがあると懸念を表明してきた。

しかし、バイデン大統領はプロジェクトに関与したドイツの関係者への制裁を放棄し、保守的な共和党員だけでなく進歩的な民主党員からも厳しく非難された。

共和党のマルコ・ルビオ上院議員は首脳会談に先立ち、バイデン大統領に宛てた書簡の中で、「ノルドストリーム2は同盟国のウクライナに経済的影響を及ぼし始めている」と懸念を表明した。

ノルドストリーム2を含むロシアのパイプラインは半国営企業のガスプロム社が管理しており、ドイツへの天然ガス輸送が増えることで、ウクライナへの輸送が削減される恐れがある。

2018年6月/アンゲラ・メルケル首相とドナルド・トランプ大統領(Getty Images/AFP通信)

メルケル首相は、ノルドストリーム2がウクライナのエネルギーに影響を与えることはないと強調した。「ウクライナはドイツと同じエネルギー輸入国であり、契約に基づきガスを受け取る権利を持っています...」

メルケル首相はロシアの動きに対応する準備はできているとけん制したうえで、「ロシアはウクライナの権利を尊重しなければならない」と強調した。

一方、バイデン大統領はノルドストリーム2への制裁を放棄したことについて、「良い友達はしっかり反対意見を言う」と主張し、自分の決断を擁護した。

また、中国やその他の国々で民主主義への攻撃が続いていることに懸念を表明し、「アメリカとドイツは民主主義の原則と人権を支持する」と述べた。

メルケル首相は重要な貿易相手国である中国の人権問題を何度も非難してきた。

バイデン大統領は記者会見の中で、大統領暗殺の混乱に見舞われているハイチに軍隊を派遣する予定はないと明らかにした。また、キューバで進行中の抗議活動については、「失敗国家」が市民を抑圧していると非難した。「共産主義は失敗システムです。平和的に抗議する市民を抑圧することは決して許されません」

メルケル首相はドイツ西部を含む西ヨーロッパの広い範囲で発生した大規模な洪水の犠牲者に哀悼の意を表した。

15年もの長きにわたりドイツを率いてきたメルケル首相はトランプ前大統領と冷淡な関係を構築し、バラク・オバマ元大統領およびジョージ・W・ブッシュ大統領とも何度か衝突した。

ドイツの総選挙は9月26日に実施される予定。最有力候補はメルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)の連合党から出馬するアーミン・ラシェット氏。

2021年7月15日/ワシントンD.C.ホワイトハウス前、カマラ・ハリス副大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相(エヴァン・ヴッチ/AP通信)
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