◎アボット・ニュートリションの工場閉鎖とリコールは深刻な粉ミルク不足を引き起こし、大騒動に発展した。
粉ミルクを飲む乳児(Getty Images/PAメディア)

粉ミルク大手アボット・ニュートリション(Abbott Nutrition)は4日、ミシガン工場の生産を再開すると発表した。

この工場は全米最大の粉ミルク工場のひとつで、衛生状態や必要な措置が守られていなかったことなどを理由に今年2月に閉鎖されていた。

工場閉鎖とアボット社製品のリコールは深刻な粉ミルク不足を引き起こし、大騒動に発展した。

全米の保護者は粉ミルクを確保するために奔走し、大手食料品店や薬局の粉ミルクコーナーはあっという間に空になった。

一部の母親はソーシャルメディアを活用し、「粉ミルク不足に悩む母親の会」という組織まで誕生した。この会は独身者を含むSNSユーザーに粉ミルクの購入を呼びかけ、手元に全く粉ミルクがない母親をサポートした。

医師や医療従事者は粉ミルクを水で薄めたり、SNSで拡散しているDIYレシピを真似ないよう警告し、粉ミルクが手に入らない場合は政府機関や病院に相談するよう呼びかけている。

アボット社は声明の中で、「ミシガン工場はFDA(食品医薬品局)が定める再開に必要な衛生要件を満たした」と発表した。

同社によると、まず重度の食物アレルギーや消化器系の問題を抱える乳児のための特殊ミルク「エレケア(EleCare)」の生産を優先するという。

その後、シミラック(Similac)などの主力製品の生産再開に必要な準備を進めるとした。

同社は声明の中で、「すべての衛生要件を遵守し、できるだけ早く(すべての製品の)生産を再開する予定」と述べている。同社によると、生産開始から店頭に並ぶまでは約3週間かかる見込みだという。

バイデン(Joe Biden)大統領は先月、粉ミルク不足を解消するために国防生産法を発動し、国防総省にFDAの要件を満たす海外製品を輸送するよう命じた。

空軍はバイデン氏の「空飛ぶ粉ミルク作戦(Operation Fly Formula)」を受け、ドイツから35トンもの粉ミルクを軍用貨物機で空輸し、議会も不足を緩和する法案を賛成多数で可決した。

FDAは2月、ミシガン工場で生産された粉ミルク製品の一部を避けるよう消費者に警告し、自主回収を開始した。3月に公表された調査報告書によると、アボット社は工場の衛生状態や必要手順を維持していなかったという。

アボット社は工場閉鎖後の声明で、「ミシガン工場で製造された粉ミルクを飲んだ乳児から環境菌が検出されたという申し出を4件受けた」と明らかにした。ミシガン工場で生産された粉ミルクを飲んだ乳児2人が病気を発症し、その後死亡している。

同社は、製品と乳児の病気や死亡を結びつける決定的な証拠はないとしている。

2022年5月18日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、国防生産法に署名するバイデン大統領(White House/ABCニュース)
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