◎ロシア軍は原発を含む南部ザポリージャ州の一部を占領している。
ウクライナ南部ザポリージャ原発の指令室(Zaporizhzhia nuclear power plant)

ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は5日、ロシア軍の支配下に置かれているザポリージャ原発について、唯一稼働している原子炉と送電系統が切り離され、メルトダウンの一歩手前まで追い詰められたと警告した。

ロシア軍は原発を含む南部ザポリージャ州の一部を占領している。

ウクライナ国営原子力企業エネルゴアトム社は同日、「原発周辺で発生した火災の影響で稼働中の原子炉に電力を供給している送電線を停止した」と報告した。

原発は外部電源を失ったものの、出力を下げた状態で運転を継続し、核燃料と使用済み核燃料の冷却システムも動作している。

IAEA(国際原子力機関)は5日の声明で、「唯一稼働している原子炉の送電系統が停止したことを認識しており、放射線量に変化はないという報告を受けている」とした。

IAEAは3日の砲撃で5号炉が送電系統から完全に切り離され、停止を余儀なくされたと報告していた。現在稼働している唯一の原子炉は、原発近くの火力発電所の送電系統を使って電力を確保したと報告されている。

エネルゴアトム社は5日の声明の中で、「送電線の寸断を狙うロシア軍の砲撃で発生した火災により、6号機に電力を供給している送電線を一時的に停止させた」と説明した。

IAEAも消火活動が終わり次第、送電を再開できるという見方を示している。

IAEAは核燃料と使用済み核燃料の冷却システムは稼働していると強調したうえで、「原発の安全性を確保するためには、送電線による電力供給だけでなく、バックアップ電源(別の送電線やディーゼル発電機など)の確保が必要不可欠である」と指摘した。

一方、ゼレンスキー氏はロシア軍が原発を砲撃したと非難し、「IAEAの声明は特に気にかけていない」と述べた。「ザポリージャ原発はロシア軍の挑発で放射能大惨事の一派手前まで追い込まれたのです」

IAEAの査察チーム14人は先週、初めてザポリージャ原発を訪問した。チームを率いたグロッシ事務局長は原発が戦争の影響で破損していることを確認したと述べたが、それがどちらの攻撃によるものかについては明言を避けた。

グロッシ氏は6日に調査報告書を公表し、現地時間19時に開かれる国連安保理で報告する予定。

この会合はロシアが招集したものである。ロシアはウクライナ軍がIAEAのザポリージャ訪問を頓挫させようとしたと非難している。

ゼレンスキー氏はIAEAの調査結果が客観的であることを望むと述べた。ロシアはIAEA査察を許可したが、メディアの立ち入りは国営に限定し、査察前に敷地内から兵器類を撤去もしくはどこかに隠したとみられる。

エネルゴアトム社は5日の声明で、IAEA専門家2人が原発にとどまる予定と明らかにした。

2022年9月3日/ウクライナ、東部ドネツク州、自撮りするウクライナ兵(Kostiantyn Liberov/AP通信)
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