◎ウクライナ南部の港湾都市には2000万トン以上の穀物が滞留している。
2022年5月26日/ウクライナ、首都キーウ、ゼレンスキー大統領とフィンランドのマリン首相(Ukrainian Presidential Press Office/AP通信)

西側諸国は26日、ロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領が「制裁緩和と引き換えにウクライナの穀物輸送を再開してもよい」と述べたことに猛反発した。

ウクライナ南部の港湾都市には2000万トン以上の穀物が滞留している。

イギリス外相はプーチン氏の発言に即座に反応。「ロシアは世界を脅迫している」と非難し緩和はないと一蹴した。

米国務長官も「野蛮、サディスティック、残虐、無法」と非難した。

ロシア政府によると、プーチン氏はイタリアのドラギ(Mario Draghi)首相との電話会談で、「ロシアは西側の政治的動機による制裁を解除することを条件に、食糧危機の克服に大きく貢献する用意がある」と述べたという。

ウクライナの主要貿易拠点であるオデーサの港はロシア海軍に包囲されている。黒海とアゾフ海に面するその他の港も破壊・占領されており、使用できない。

ロシアのペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は26日、「西側は穀物の輸出を妨げる不法な制裁を取り消すべきだ」と述べた。

しかし、西側はこの主張を退けている。米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官は先週、「食料、肥料、種子は制裁の対象外であり、米国はこれらの商品が影響を受けないよう各国に周知している」と指摘した。

世界の指導者、特にアフリカの指導者たちは食料危機の速やかな解決を求めている。

世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ(Ngozi Okonjo-Iweala)事務局長は、「約2500万トンのウクライナの穀物が行き場を失い、さらに2500万トンが来月収穫される可能性がある」と警告している。

穀物の滞留は収穫だけでなく「作付け」にも影響を与える。

西側はウクライナの穀物を陸路で輸送しようとしているが、鉄道の輸送量は貨物船に比べるとはるかに少ない。

ロシア国防省は占領したマリウポリ港の外国船向け人道回廊の設置も提案している。

同省によると、南部オデーサ州、ヘルソン州、ミコライフ州など、黒海の6港に16カ国の外国船70隻が入港しているという。穀物の輸送が可能な船舶の数は明らかにしていない。

ウクライナのクレバ(Dmytro Kuleba)外相は、人道回廊の設置に合意する用意はあるが、ロシア軍が航路の安全を保証するかどうかは分からず、「対オデーサ用の軍艦を先に入港させる可能性がある」と指摘した。

イギリスのトラス(Liz Truss)外相はプーチン氏の要求を却下し、制裁緩和はないと一蹴した。

一方、ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は26日のビデオ演説で、EUに対ロシア制裁を速やかに強化するよう改めて呼びかけた。

プーチン氏は制裁が緩和されなければ穀物輸送再開はないと強調している。

同氏は旧ソ連構成国からなるユーラシア経済フォーラムに宛てたビデオ演説の中で、「ロシアを孤立させることは現代世界では不可能であり、全く非現実的だ」と述べている。「ロシアの孤立を試みる者は自らを傷つけるでしょう...」

ロシア軍は東部ドンバスの完全制圧を目指し、攻勢を強めているとみられる。

ゼレンスキー氏によると、ロシア軍は第二の都市ハルキウを砲撃し、生後5カ月の乳児を含む9人が死亡、19人が負傷したという。

ロシア軍に占領されたマリウポリではロシア国営テレビのニュース放送が始まったと伝えられている。

ロシアの同盟国ベラルーシのルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領は26日、ウクライナ国境に軍隊を送ると明らかにした。ベラルーシはロシア軍の補給を支援したとみられるが、ウクライナ領内には入っていない。

2022年5月26日/ウクライナ、首都キーウ郊外のイルピン(Natacha Pisarenko/AP通信)
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