◎ウクライナ軍は西側の同盟国が提供した長距離兵器などを駆使して反攻作戦を有利に進めているとみられる。
2022年9月10日/ウクライナ、東部ドネツク州のウクライナ軍管理地(Leo Correa/AP通信)

ロシア国防省は10日、ウクライナ東部ヘルソン州の部隊を撤退させたと発表した。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は10日のビデオ演説で「ロシア兵が背中を見せた」と述べたが、作戦の詳細は明らかにしなかった。

国営テレビなどによると、ウクライナ軍は東部地域の重要な補給拠点とされるハルキウ州の町クピャンスクに攻め入ったという。

この町は開戦直後に占領され、ロシア軍の支配下に置かれていた。

一方、ロシア国防省はハルキウ州イジュムから撤退させた部隊を再編していると説明した。

また同省はドネツク州の戦線を強化するとしている。ロシア軍は東部ルハンシク州を支配し、その西に位置するドネツク州に攻め入ろうとしているが、ウクライナ軍の反撃を受け、数カ月前進できずにいる。

ウクライナのハルキウ州奪還が事実であれば、首都キーウ防衛以来の大きな成果となるだろう。

ゼレンスキー氏はビデオ演説の中で、「今月初めの反攻開始以来、ウクライナはロシアから2000㎢を解放した」と説明した。

ゼレンスキー氏は8日の演説で1000㎢を解放したと報告していた。

イジュムはロシア軍の主要拠点のひとつとされているため、ウクライナ軍は大きな成果を上げたことになる。

ロシア国防省は声明の中で、「イジュムの部隊をドネツク人民共和国領内に移動させている」と述べている。

また同省は、「部隊への被害を避けるため、敵に大打撃を与えた」と主張した。

国営タス通信によると、ハルキウ州のロシア軍司令官はこの地域の住民をロシアに避難させるよう勧告したという。この住民にウクライナ人が含まれるかどうかは不明。

また、ハルキウ州に隣接するロシア領ベルゴロド州政府は、「多くの避難民がロシア領内に入ったため、食料、暖房、医療支援を提供する予定」と報告した。

ウクライナ軍は西側の同盟国が提供した長距離兵器などを駆使して反攻作戦を有利に進めているとみられる。

ウクライナのクレバ(Dmytro Kuleba)外相は10日、「東部の進展はウクライナ軍がロシア軍を倒すことができることを示しており、欧米の武器があればより早く戦争を終わらせることができる」とSNSに投稿した。

英国防省も10日の定例報告で、ウクライナ軍がハルキウ州南部から50kmほど前進したと報告。この地域のロシア軍は孤立していると指摘した。

また同省は「ロシア軍はクピャンスクを失い、その損失はロシア軍の補給に大きな影響を与える」と推定した。

ウクライナは今週初め、南部ヘルソン州に続いて東部でも反攻を開始した。西側諸国はロシア編入住民投票を画策しているヘルソン州の攻防に注目している。

米シンクタンク戦争研究所などは、ロシア軍が東部の部隊の一部をヘルソン州防衛に振り分けたと考えている。同州の戦況はほとんど明らかにされていない。

しかし、米国務省と英国防省はウクライナ軍が東部だけでなく、南部でも一定の成果を上げ、反攻を有利に進めていると報告した。

ウクライナ軍南部司令部の報道官は10日、国営テレビのインタビューで、「南部戦線において2〜数十km前進した」と語った。

しかし、南部戦線のロシア軍は防御態勢に入ったとみられ、ウクライナ軍は激しい抵抗に直面しているとみられる。

ウクライナ軍はクピャンスクの政府庁舎前で撮影したとされる写真をSNSに投稿している。写真の兵士は足元にロシアの国旗を置き、自国の国旗を掲げた。

ゼレンスキー氏はロシア軍に占領された地域をひとつ残らず開放し、ウクライナの国旗を掲げ、全国民を保護すると約束した。

またゼレンスキー氏は、警察を解放した地域に再配備し、治安維持とロシアの戦争犯罪調査を開始すると発表。市民にロシア軍に関する情報があれば提供するよう呼びかけた。

国連のウクライナ監視団も首都キーウなどでロシア軍の戦争犯罪調査を進めており、今週、捕虜に対するさまざまな人権侵害を調査・記録したとする報告書を公表した。

監視団はウクライナ軍の捕虜に対する不当な扱いや拷問についても言及している。

2022年9月10日/ウクライナ、東部ドネツク州のウクライナ軍管理地(Leo Correa/AP通信)
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