◎ウクライナとロシアは原発が攻撃を受けたと互いを非難している。
2022年8月8日/ウクライナ、南部ミコライフ州、ウクライナ軍の兵士(Evgeniy Maloletka/AP通信)

ウクライナ南部ザポリージャ州政府は8日、同州内のザポリージャ原子力発電所の危機的状況は続いており、ロシア軍は原発を軍事基地として利用していると報告した。

国営原子力企業エネルゴアトムのコーチン(Petro Kotin)社長はウクライナ公共放送のインタビューの中で、「原発は脅威にさらされているが、今のところ安全性は保たれている」と語った。

ウクライナとロシアは原発が攻撃を受けたと互いを非難している。

ザポリージャ原発を含む同州の一部地域は親ロシア勢力の支配下に置かれている。米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官は先週、ロシアは原発を「核の盾」として利用していると非難した。

ウクライナ政府は8日、同原発とその周辺を非武装地帯に設定するよう呼びかけた。原発本体が攻撃を受けなくても、そこに電力を供給する高圧送電線や変電設備が破壊されれば、冷却プールなどが機能しなくなり、大惨事につながる恐れがある。

ウクライナ政府は週末、ロシア軍が原発を攻撃したと報告した。報道によると、原発の作業員2人が負傷し、病院に搬送され、放射線を検知するセンサー3つが破壊されたという。

コーチン氏は、「原発内にはロシア兵が約500人配備され、周辺にはロケットランチャーが設置されている」と説明した。

またコーチン氏はロシアが原発を核の盾として利用している非難した。「原発に立てこもればウクライナ軍は攻撃できません。一方的にロケット弾を撃ち込めるでしょう」

コーチン氏はウクライナ軍が原発を攻撃することはないと断言した。「彼らはそこにウクライナの技術者がいることを知っています。そして、原発のインフラを破壊すれは、取り返しのつかない壊滅的な事故が発生することを知っています」

ウクライナ公共放送によると、原発のウクライナ人技術者は極度のプレッシャーにさらされ、何人かはロシア軍の拷問を受けたという。

米シンクタンク「戦争研究所」はロシアの原発占領について、「ウクライナの送電網から切り離し、ロシアの送電網と接続しようとしている」と指摘している。

南東部ドニプロペトロウシク州の知事は6日、ザポリージャ原発近くの都市にミサイルが着弾し、民間人少なくとも3人が負傷したと報告した。

ロシア軍は原発周辺への攻撃を続けているとみられるが、前線の状況はほとんど明らかにされていない。

国際原子力機関(IAEA)や国連は同原発への攻撃停止と査察を認めるよう呼びかけている。

国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は原発への攻撃を「自殺行為」と呼び、ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は「ロシアの核テロ」と非難した。

ゼレンスキー氏は7日遅くに公開したビデオ演説で、「原子力発電所への攻撃に落ち着いていられる国は存在しない」と述べ、ロシアを厳しく非難した。「ウクライナは原発を攻撃しません。そこはウクライナであり、それが爆発すれば世界を巻き込む未曽有の大災害になるでしょう」

しかし、ロシアはこの主張を否定し、ウクライナ軍が攻撃したという以前の主張を繰り返した。ロシア国防省によると、ウクライナ軍の攻撃で高圧送電線が損傷したという。

戦争研究所は先週公表したレポートで、「ロシアは核災害が現実になるという恐怖で西側を震え上がらせ、ウクライナへの軍事支援と結束を鈍らせようとしている」と評価した。

2022年5月1日/ウクライナ、南部ザポリージャ州のザポリージャ原発構内、ロシア兵(AP通信)
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