◎首都キーウや南部オデーサ州などの主要都市でヘルソン奪還を祝うイベントが開かれ、数百人がワインを持ち寄り、歓喜した。
2022年11月12日/ウクライナ、南部オデーサ州、ヘルソン市奪還を祝う人々(Nina Lyashonok/AP通信)

ウクライナ大統領府は12日、各地で南部ヘルソン市の奪還を祝う集会が開かれていることについて、「ロシア軍の動きを注視し、戦争が終わるまで気を許してはならない」と国民に呼びかけた。

首都キーウや南部オデーサ州などの主要都市でヘルソン奪還を祝うイベントが開かれ、数百人がワインを持ち寄り、歓喜した。

しかし、ウクライナ当局はヘルソン市から撤退したロシア軍がドニエプル川東岸に防衛線を構築していることや、市内にスパイを潜伏させている可能性に触れ、戦争が終わるまで気を緩めないよう呼びかけている。

ウクライナ外相は13日、訪問先のカンボジアでウクライナ軍の勝利を称賛したうえで、油断しないよう促した。国防相の顧問も「安心するのはまだ早い」と警告している。

大統領府の報道官はテレグラムに、「敵はパニックを起こしているが、戦争はまだ終わっていない」と投稿し、ヘルソンの住民に地雷やブービートラップに注意するよう改めて呼びかけた。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は13日に公開した動画で、ヘルソン州の地域と集落60以上を解放し、軍や警察などを配備して安定化(地雷除去やインフラの復旧など)に向けた取り組みを進めていると報告した。

またゼレンスキー氏は「ロシア軍は撤退に合わせて市内の重要インフラをすべて破壊した」と非難した。停電の解消時期は未定としている。

西側のシンクタンクや専門家によると、ヘルソン州の50~70%が以前としてロシア軍の支配下に置かれているという。

ヘルソン市のウクライナ当局は13日、市内のエネルギーインフラはことごとく破壊され、水道も機能していないと報告した。しかし、近隣のミコライウ州から支援物資が届き始めているという情報も寄せられている。

ウクライナ当局によると、ヘルソン市内にとどまっている市民は7~8万人程だという。戦前の人口は約32万人で、多くがキーウや西部リビウなどに避難したと伝えられている。

ウクライナ軍はヘルソン州内の地雷とブービートラップの撤去を進めているとみられる。

一方、ウクライナ公共放送はヘルソン市内で放送を再開したと発表した。ロシアの支配地域で西側のテレビやニュースを見ることはできない。

ロシア軍は13日も各地で攻撃を続けている。

ウクライナ大統領府は直近24時間のロシア軍による攻撃で民間人少なくとも2人が死亡、4人が負傷したと報告した。

エネルギーインフラに対するミサイルおよびイラン製カミカゼドローン攻撃も続いているとみられる。

米国のシンクタンク戦争研究所はドニエプル川東岸に撤退したロシア軍について、「より強固な防衛線を構築することは確実であり、突破は一筋縄ではいかない」と報告している。

ウクライナ国防省もこれと同じ見方を示し、ロシア軍は防衛に焦点を当てるため、難しい戦いが続くと予想している。

ロシア軍によると、ヘルソン市から兵士3万人と軍事機器や物資約5000個を撤退させたという。この戦力の大半が防衛に回ると予想されている。

英国防省は13日、ロシア軍が撤退の一環としてドニエプル川にかかる道路や鉄道橋を破壊した可能性が非常に高いと報告した。12日に公開された衛星写真には東岸にかかる唯一の橋、アントノフスキー橋の一部が崩落しているところが写っている。

米宇宙技術会社マクサー・テクノロジーズはヘルソン州のダムの一部と水門が破壊されたとツイートしている。ダムの下流には道路と鉄道があり、それが寸断されていることも確認できる。ロシア軍が破壊したかどうかは不明だ。

主要メディアはダムの一端で爆発が発生する映像を報じている。

ウクライナとロシアは互いにダムの破壊を計画したと非難し合っている。ダムが崩壊すれば下流で洪水が発生する可能性がある。

ロシア国営メディアは13日、ヘルソン州のロシア指導部が州都機能をヘルソン市からアゾフ海に面する別の都市に移したと伝えた。この年はクリミア半島に近く、防衛しやすいとみられる。

ロシアのインタファクス通信によると、当局はヘルソン市とその周辺地域からすべての地方事務所、彫像、歴史的遺物を東岸に移し、市民11万5千人以上を避難させたという。

英国防省はヘルソン撤退について、「ロシアはヘルソン市以外の主要都市を占領できておらず、唯一占領した都市も失った」と指摘している。「この撤退はウクライナ侵攻が完全に失敗だったことを示しています....」

ロシアのあるブロガーはこう書いている。「なんで撤退した?この半年の戦いは何だったのか。自問せざるを得ない。この半年で何人死んだ?」

2022年11月12日/ウクライナ、南部ミコライウ州の住宅地、遺体をチェックする警察関係者(Efrem Lukatsky/AP通信)
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