◎ウクライナ侵攻により、世界の食料価格は過去最高水準に達した。
ロイター通信/ロシア軍に掌握されたウクライナの地域(日本時間4月19日午前6時時点)

ロシア軍は22日、ウクライナの東部と南部地域を掌握するための作戦を開始すると発表した。

一部の専門家は、ウクライナの肥沃な大地と南部の輸出拠点が切り離されれば、世界の食糧供給に深刻な影響が出ると懸念している。

ウクライナ侵攻により、世界の食料価格は過去最高水準に達した。

ロシア軍は南東部の港湾都市マリウポリを含むアゾフ海と黒海に面する南部全域を占領する大規模な作戦を準備している。

ウクライナ・アグリビジネス・クラブ(UCAB)のスラストン氏はアルジャジーラのインタビューの中で、「ロシアが南部の港と肥沃な大地を占領すれば、ウクライナの食料輸出を制限され、その影響は世界に広がる」と警告した。

スラストン氏は、「このギャップを埋める代替案はない」と説明した。「港が制圧され食糧輸出が停止すれば、世界の多くの国で飢餓、暴動、飢えた難民の大移動が発生するでしょう」

国連によると、ウクライナの2021年の小麦輸出は世界第6位。大麦やひまわりの種の輸出量も世界トップクラスである。

世界飢餓指数によると、アフリカと中東で流通しているパンの30~50%がウクライナの小麦から生産されている。2021年の飢餓指数で高レベルと評価された国は47カ国で、2022年にはこの数が60カ国以上になると予想されている。

ゼレンスキー大統領は東部ドンバスを含むウクライナの領土を手放す気は一切なく、徹底抗戦すると約束している。

米農務省によると、南東部のルハンシク州、ドネツク州、ザポリージャ州、へルソン州を失えば、ウクライナは農業生産のほぼ25%を失うことになるという。

さらに南部の港を失えば、その他の地域で生産された穀物を輸出することも困難になる。

ロシアは今週、アゾフ海に面する港湾都市マリウポルを制圧したと主張した。また、黒海に面する港湾都市へルソンも制圧し、近郊のミコライフでも作戦を継続していると伝えられている。

南部オデーサは今のところ激しい戦闘を免れているが、黒海に展開されたロシア軍艦の影響で商業船は運航停止を余儀なくされている。

スラストン氏はアルジャジーラに、「130以上の農業セクターを代表する非政府組織は西側国境に通じる鉄道や道路に目を向けているが、これらの輸送効率は非常に悪く、輸出量はかなり落ち込むだろう」と説明した。「例えば、ヒマワリの種の輸出量は戦前の15~20%に落ち込んでいます。この量で世界市場の需要を満たすことは困難です」

国連食糧農業機関(FAO)も、戦争がもたらす食糧安全保障の問題は「食糧の供給量より輸送ルートに関連している」と指摘している。

FAOのエコノミストによると、ウクライナの商品輸出の90%が黒海とアゾフ海の港を経由していたという。「ウクライナの港を利用できない状態が続けば、EUや中国などの食糧輸出国が対応しない限り、世界市場にかかる圧力は緩和されないだろう」

FAOの2月の食料価格指数は過去最高を更新し、3月でさらに記録を更新した。穀物価格指数は3月に17.1%、植物油価格はヒマワリ種子油の高騰に牽引され23.2%上昇した。

スラストン氏は「ロシアがドネツク州とルハンスク州を占領できたとしても、食糧安全保障への影響は限定的だが、アゾフ海と黒海の港を占領されれば、世界市場は深刻な影響を受ける」と強調した。

またスラストン氏は、「港が制圧され国内市場で野菜を含む食料が手に入りにくくなれば、占領を免れた他の地域の農家はこれまで輸出用だった作物を国内消費に回すだろう」と指摘した。

さらに、農家に欠かせないトラクター、耕運機、コンバイン、配送トラックなどに必要なディーゼル燃料の大半はベラルーシやロシア経由でウクライナに輸入されている。ディーゼルの枯渇は作物の枯渇を意味する。

ロシアの農家が気候変動の影響を強く受けていることも危機に拍車をかける可能性がある。

ロシアは2010年、深刻な干ばつで作物が大破したことを受け、小麦の輸出を禁止した。ロシアは小麦、トウモロコシ、菜種、ヒマワリの種、ヒマワリ油の大輸出国である。

ウクライナとロシアの輸出制限が重なれば、最も弱い立場の人々はさらに苦しむことになる。

2022年3月22日/ウクライナ中部の農家(Thomas Peter/ロイター通信)
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