◎米ホワイトハウス、シンクタンク、その他の専門家はロシア軍がバフムートとソレダルに多くの部隊を送り込み、必死に占領を試みていることに疑問を投げかけている。
2023年1月11日/ウクライナ、東部ドネツク州バフムート近郊、迫撃砲を発射するウクライナ兵(Evgeniy Maloletka/AP通信)

ロシア国防省は13日、東部ドネツク州ソレダルを占領したと発表し、ロシア軍はウクライナ軍に攻勢を仕掛けていると主張した。

国防省報道官は声明で、「この勝利により、ロシア軍は近郊のバフムートまで前進し、ウクライナ軍の供給ルートを断ち切ることができる」と説明した。

しかし、ウクライナ当局はこの発表を否定し、ソレダルのウクライナ軍は持ちこたえていると反論した。

米ホワイトハウス、シンクタンク、その他の専門家はロシア軍がバフムートとソレダルに多くの部隊を送り込み、必死に占領を試みていることに疑問を投げかけている。

米シンクタンク戦争研究所は「ソレダルを仮に占領できたとしても、要衝バフムートを包囲できる可能性は低い」という認識を示し、ロシアはソレダルに固執し過ぎているように見えると指摘した。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は13日に公開した動画で、ロシア軍によるドネツク州への激しい攻撃が続いていると報告した。

ソレダルは人口約1万人の小さな町で、占領できても全体の戦況に影響を与える可能性は低いとみられている。しかし、ロシア軍はこの6カ月、大きな戦果を上げておらず、ソレダルを占領できれば、作戦は順調に進んでいると国内でアピールできるだろう。

ソレダル攻略戦にはロシアの民間軍事企業ワグネルの戦闘員が動員された。

ゼレンスキー氏は今週、「ソレダルは廃墟になり、何も残っていない」と述べ、ロシア兵の遺体が散らばっていると説明した。

ゼレンスキー氏は13日の演説ではソレダルに言及せず、ドネツク州内で激戦が続いていると述べるにとどめた。

ウクライナ軍参謀本部はバフムートとソレダルの戦いを第一次世界大戦の西部戦線「ヴェルダンの戦い」に例え、厳しい戦いが続いていると述べた。独軍と仏軍によるヴェルダンの戦いは10か月ほど続き、両軍の死者数は70万人超と推定されている。

ドネツク州のウクライナ当局は12日、「ソレダルには児童15人を含む市民559人がとどまり、避難できずにいる」と警告した。

ロシア軍は昨年7月以来、ウクライナの町をひとつも占領できていない。一部のアナリストは「ロシア軍高官はプーチン(Vladimir Putin)大統領を満足させるためにソレダルに兵力を集中させているように見える」と指摘している。

西側の支援を受けるウクライナ軍の反抗作戦は順調に進み、ロシア軍を東部ヘルソン州からほぼ追い出し、昨年10月には南部の主要都市ヘルソン市を奪還した。

ヘルソン市はロシア軍が占領に成功した唯一の州都であった。

米戦争研究所はロシア軍がソレダルに注力している理由について、「厳しい環境の中で戦う前線部隊に少しでも良いニュースを届けるために必死になっている」という見方を示した。

しかし、ウクライナ東参謀本部は「ソレダルを占領した」というロシア国防省の発表を否定した。同参謀本部は「前線の状況を明らかにすれば作戦に支障が出る」として詳細を明らかにしていない。

ウクライナ国防省もSNSに「ソレダルで熱い戦いが続いている」と投稿。「ウクライナ軍は勇敢に防御を固めようとしている」と強調した。

西側諸国はソレダルとバフムートの戦いにワグネルとロシア正規軍が参加していると指摘している。

しかし、ワグネルの創設者であるプリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏はこの数日、「ソレダルで活動しているのはワグネルだけだ」と繰り返し主張してきた。

プリゴジン氏は今週、ソレダルを占領したと主張したが、ロシア国防省は勝利宣言を急がないことが肝要という認識を示した。

ロシア国防省はワグネルについて一言も言及しておらず、ソレダルで戦っているのはロシアの正規軍と主張している。

プリゴジン氏はロシア国防省がソレダル占領を否定したことに驚いているという声明を出した。「ソレダルにロシア兵はひとりもおらず、我々の戦闘員を侮辱し、功績を横取りすべきではない...」

ブリゴジン氏は13日、「ソレダルの戦いにおける最大の脅威は権力を保持したい役人である」と非難した。

ロシア国防省は同日の声明でソレダルの戦いに参加した兵士を称賛したが、ワグネルには言及せず、正規軍が結果を出したと強調した。

2023年1月12日/ウクライナ、東部ドネツク州バフムート近郊(LIBKOS/AP通信)
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