◎カホフカ水力発電ダムは1956年に建設され、ドニプロ川を通じて南部の市民やザポリージャ原発に水を供給している。
2023年6月8日/ウクライナ、南部ヘルソン州のロシア支配地域、カホウカ水力発電ダムの決壊で冠水した町(AP通信)

ウクライナ南部ヘルソン州当局は8日、カホフカ水力発電所ダムの決壊について、これまでに9人の死亡を確認し、避難中にロシア軍の砲撃を受けた市民少なくとも18人が負傷したと報告した。

同州のプロクジン(Oleksandr Prokudin)知事は声明で、「州全体で600㎢が冠水し、うち68%はロシア軍の支配地域に当たる」と述べた。

それによると、ロシア支配地域から避難することは極めて難しく、死傷者数はこれよりはるかに多い可能性が高いという。

プロクジン氏はヘルソン市近郊の町で市民30人が救助され、その多くが低体温症で入院したと明らかにした。

カホフカ水力発電ダムは1956年に建設され、ドニプロ川を通じて南部の市民やザポリージャ原発に水を供給している。

6日の現地時間午前2時頃に発生した爆発でダムが決壊。貯水湖にせき止められていた水は18立方キロメートル以上と推定されている。

このダム決壊は戦争に大きな影響を与える可能性がある。

ウクライナの管理下にある西岸では2000人以上が避難を余儀なくされ、その多くは高齢者と子供だった。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は8日、ヘルソン州とミコライウ州の浸水地域、避難所、病院を視察した。

内務省によると、ロシア軍によるヘルソン市への砲撃はダム決壊後も続き、1人が死亡、救急隊員ら18人が負傷したという。

国連はロシアが占領地への安全な通行を保証した場合に限り、ヘルソンとザポリージャ向けの特別チームを結成し、人道支援を提供するとしている。

ウクライナ大統領府によると、ダム決壊により、ヘルソン州内で約2万世帯が停電したものの、その他の地域への電力供給は安定しているという。

電力会社はダム決壊後、近隣諸国から一時的に電力を購入し、他の水力発電所の負荷を軽減、一部区間を停電し、復旧作業を行った。

農業省は8日、ダム決壊による南部の畑が砂漠化し、約100万トンもの穀物・農作物を失う可能性があると警告した。

それによると、ヘルソン州の西岸だけで1万ヘクタールもの農地が冠水し、東岸の被害はその数倍にのぼる可能性があるという。

この決壊により、ヘルソン州の94%、ザポリージャ州の74%、ドニエプロペトロフスク州の30%の灌漑農地が失われたと推定されている。

一方、検察庁はダム爆破に関するすべての情報を国際刑事裁判所(ICC)に提出したと発表した。

同庁は声明で、「カホフカダムへの攻撃は戦争犯罪であり、我々は犯人を裁くためにあらゆる手段を講じる」と述べている。

2023年6月8日/ウクライナ、南部ヘルソン州のロシア支配地域にあるカホウカ水力発電ダム(AP通信)
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