◎ロシアは結果を好きなように書き換え、賛成多数で編入が決まったと宣言すると予想されている。
2022年9月23日/ウクライナ東部、ルガンスク人民共和国の投票所(AP通信)

ウクライナ東部と南部でロシア編入の是非を問う住民投票が始まった。

南部ザポリージャ州の女性はウクライナ公共放送のインタビューで、「武装兵が自宅に現れ、口頭で質問に答えるよう命じられた」と説明した。「兵士は私に口頭でイエスかノーか答えるよう命じ、その結果を投票用紙に書き込むと説明しました...」

南部ヘルソン州ではロシア兵が町のど真ん中で投票箱を持ち、人々から「紙」を集めていたと報じられている。

国営ロシア通信(RIA)は政府高官の話を引用し、「有権者をウクライナ軍の砲撃から守るために戸別訪問を実施している」と伝えた。

一方、タス通信は「直接投票は9月27日のみ行われる」とし、23日~26日は戸別訪問で対応すると報じた。

東部の分離主義国家ドネツクとルガンスク人民共和国、南部ヘルソン州とザポリージャ州のロシア支配地域では23日~27日にかけて住民投票が行われている。

ザポリージャ州メリトポリのある女性はBBCニュースのインタビューで、「地元の協力者2人がロシア兵2人とともに両親のアパートにやってきて、投票用紙を手渡した」と述べた。

「私の父はノーと書きました。母は兵士にノーと書いたらどうなるの?と尋ねました。すると兵士は、何もないと言いました。母はロシアに強制送還されるのではないかと心配しています」

この女性によると、投票用紙はひとり一枚ではなく、世帯で一枚だったという。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領はこの住民投票を「茶番」と嘲笑し、国際社会に投票結果を承認せず、ロシアを糾弾するよう呼びかけている。

一方、ロシア当局は自由で民主的な投票を保証すると主張している。

ロシアは結果を好きなように書き換え、賛成多数で編入が決まったと宣言すると予想されている。

ロシア連邦議会とプーチン(Vladimir Putin)大統領が住民投票の結果を認めれば、2つの自称人民共和国と2州はロシアに強制併合され、そこに対する攻撃はロシア領への攻撃と見なされることになる。

西側諸国は併合を認めないが、ロシアは併合したと主張し、ウクライナがそこを西側の兵器で攻撃すれば、「西側vsロシア」という構図が出来上がる。ロシアはこれを「国家存亡の危機」と見なし、より強力な攻撃をしかけてくるかもしれない。

バイデン(Joe Biden)大統領は21日の国連総会一般討論演説で住民投票を「見せかけ」と呼び、国際法に反して力づくでウクライナの一部を併合しようとする「口実」であると非難した。

英外務省も同様の見解を示す一方、「ロシアはすでに偽の住民投票の投票率と賛成率を決めている」と指摘した。

英外務省によると、ロシアは今月末までに4地域を正式に併合する予定だという。

南部ヘルソン州のある住民はAP通信に、「この10年間使われていなかった港の建物で投票できるという発表以外、投票を奨励する公的な努力はみられなかった」と語った。

ヘルソン州の別の女性は、投票所の外に武装兵が陣取り、住民を威嚇していたと述べた。「ある兵士はノーと書いても意味がない、と笑いながら話していました」

テレグラムには投票に参加せず、州外への避難を呼びかける投稿も寄せられている。ただし、これらの地域からウクライナ軍の管理地に安全に移動できるという保証はない。

AFP通信の取材に応じたヘルソン州の男性は、「私たちはどうなってしまうのか」と懸念を表明した。「父はウクライナ軍が助けに来ると言っていますが、それまでに併合されれば、私たちはロシア国民にされてしまいます...」

ウクライナ政府は「住民投票は何も変えず、ウクライナ軍は反攻作戦を継続し、全領土を解放する」と誓っている。

一方、ロシアではプーチン氏のドラフト会議が始まり、戦地に送られたくないロシア人の国外脱出が本格化している。ショイグ(Sergei Shoigu)国防相は予備役30万人を動員し、死地に送り込むとしている。

ジョージアなどの国境検問所にはドラフト指名を避けたいロシア人男性が殺到し、大渋滞が発生した。

サンクトペテルブルクからカザフスタンに向かったあるロシア人男性はBBCニュースの取材に対し、「私の友人も国外に向かっている」と語った。「ロシアは崩壊に向かっていると感じます。今、亡命のことを考えていない人は、たぶん1人か2人しかいないと思います」

ロシア国防省は動員令発表から24時間以内に予備役1万人が参加を志願したと主張している。

テレグラムによると、片道航空券を購入できなかった多くの男性が僻地の村に避難し、身を隠しているという。

あるユーザーは、「私を含む多くのロシア人がウクライナ戦争を他人事と考えていた」と投稿している。「あの男は近いうちに総動員令を出すでしょう。私はシベリアに逃亡します。死にたくない!」

2022年9月23日/ウクライナ東部、ルガンスク人民共和国の首長レオニード・パセチニク氏(AP通信)
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