ウクライナに対する銃弾と爆撃は、世界の飢餓危機をこれまで経験したことのないレベルに押し上げる可能性がある。
2022年3月4日/ウクライナ、首都キエフの駅入り口(Emilio Morenatti/AP通信)

国連は4日、ロシア軍の侵攻で避難を余儀なくされた多くのウクライナ人が飢餓に直面していると懸念を表明し、国際社会に支援を呼びかけた。

ウクライナは世界の「穀倉地帯」のひとつであったが、ロシア軍の侵攻で小麦貿易は混乱し、ウクライナ人だけでなく世界の食料価格と食料安全保障に深刻な影響を与える可能性がある。

世界食糧計画(WFP)のデイビッド・ビーズリー事務局長はポーランドとウクライナの国境付近に設置された施設を訪問し、現地の危機的な状況に懸念を表明した。「ウクライナに対する銃弾と爆撃は、世界の飢餓危機をこれまで経験したことのないレベルに押し上げる可能性があります...」

WFPを含む世界の人道機関は、ウクライナへの食料支援と国境を越えるウクライナ市民を保護するために検問所近くに避難所を設置している。

国連の推計によると、2月24日の侵攻開始以来、ウクライナの市民200万人以上が避難生活を余儀なくされ、3月3日時点で約50万人の子供を含む100万人以上が国外避難民になった。

首都キエフからポーランドに避難した女性は現地メディアの取材に対し、「故郷に帰りたい、どこもかしこも平和であってほしい、戦争が終わってほしい」と述べた。

WFPによると、喫緊の課題は首都キエフを含む激戦地への食料ライフラインを確立することだという。キエフや第二の都市ハリコフでは食料と水不足が報告されている。

現地で活動しているWFPの当局者は、戦闘の激化が予想される地域への食料の事前配備を進めている。

またWFPはウクライナで支援物資の配布を手伝ってくれる団体や、食料を融通してくれる近隣諸国の業者も募集している。

ウクライナでは現金が不足しているため、WFPは食料配布、現金、特定の店舗で使用できる食料引換券を配布する予定である。

食糧農業機関(FAO)が公表している最新の食糧価格指数によると、世界の食糧価格は先月、10年ぶりの高値に達した。

ロシアとウクライナは世界の小麦取引のおよそ30%を担っている。国連は、小麦の生産と輸出に深刻な混乱が生じれば、食料価格はさらに上昇し、数千万の人々に影響を及ぼす可能性があると懸念を表明している。

ビーズリー事務局長は記者団に、「進行中の危機はウクライナだけの問題ではない」と語った。「小麦の輸出減は世界のサプライチェーン、特に食料価格に深刻な影響を与えるでしょう...」

WFPは食糧支援が必要な国々に配布している小麦の約50%をウクライナで購入し、イエメン、シリア、アフガニスタン、エチオピアなどに供給していた。

ビーズリー事務局長によると、WFPの運営コストは小麦を含む食料価格の高騰で毎月6,000万ドル~7,500万ドル(70億~86億円)上昇する可能性があるという。

国連は今回の戦争で最大1,000万人が難民になる可能性があると警告している。

食料価格の高騰はウクライナ難民への支援を困難にするだけでなく、内戦状態にあるイエメンやシリア、アフガニスタンなどへの支援にも影響を与えるだろう。

2022年3月4日/ウクライナ、首都キエフの駅構内(Emilio Morenatti/AP通信)
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