◎ドニプロ川以西のウクライナ領で1万7000人、ロシア支配地域(東側)で2万5000人が洪水に巻き込まれる可能性がある。
2023年6月6日/ウクライナ、南部ヘルソン州のロシア支配地域にあるカホウカ水力発電ダムの衛星写真(Maxar Technologies/AP通信)

ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は6日、ロシア軍の占領下にある南部ヘルソン州のカホウカ水力発電ダムが爆破され、下流の住民数千人が避難を余儀なくされていると報告した。

ゼレンスキー氏はSNSに声明を投稿。80の町や村が冠水・浸水被害に遭う可能性があると警告し、ロシアを糾弾した。

貯水湖の水はドニプロ川に流れ込み、州都ヘルソン市を含む市街地に影響を与えると懸念されている。

ロシア国防省は占領地にあるダムの爆破を否定し、ウクライナ軍が破壊したと主張している。

カホフカダムは上流にある貯水池の受け口であり、南部地域の水インフラを支えている。それは農家や市民だけでなく、ロシアの占領下にあるザポリージャ原発にも水を供給している。

このダムを管理する国営Ukrhydroenergoは声明で、「ダムの流出ピークは7日午前になると予想される」と警告した。水位はしばらく高い状態が続き、4〜5日以内に引くと予想されている。

ザポリージャ原発は現在、全基停止中だが、ドニプロ川の水位が低下し冷却水を取り込めなくなれば、大事故につながる恐れがある。

国際原子力機関(IAEA)は6日、「ザポリージャ原発は制御下にあり、現時点で安全上のリスクはない」と報告した。

ウクライナ大統領府が共有した映像にはダムの裂け目から水が流れ出すところが映っている。いくつかの町はすでに浸水し、多くの市民がバスや電車での避難を余儀なくされている。

ウクライナ公共放送は政府高官の話として、「ドニプロ川以西のウクライナ領で1万7000人、ロシア支配地域(東側)で2万5000人が洪水に巻き込まれる可能性がある」と伝え、流域の市民に避難を呼びかけた。

また「これまでに約1000人が避難し、24の集落が浸水した」としている。

ウクライナ大統領府は別の声明で「ロシア軍がヘルソンの避難所を砲撃した」と報告したが、負傷者の有無は明らかにしていない。

ロシアの占領下にある町の首長はテレグラムに声明を投稿。「町の広い範囲が水没し、約900人が避難を余儀なくされた」と書き込んだ。

それによると、低地の水位は11mに達し、数人が病院に搬送されたという。

別の親ロシア首長も町が水没したと報告している。

ドニプロ川沿いにある動物園は完全に水没し、動物300匹が溺死したと伝えられている

ダムが決壊した理由は明らかになっていないが、ウクライナの情報機関はウ軍の反攻作戦を恐れるロシアがダムを破壊し、進路を断とうとしていると非難した。

一方、ロシア当局は関与を否定し、ウ軍およびそれを支持する勢力がロシア領内に入り、ダムを爆破したと主張している。

ロシアは南部の拠点であるヘルソン州を是が非でも防衛したいと考えており、ダムを破壊してウ軍の反攻を無理やり抑えこもうとしている可能性がある。

ウクライナ軍は昨秋、ダム下流の道路や鉄道橋を攻撃し、ヘルソン周辺のロシア軍を孤立させることに成功した。ロシアは多方面からの反攻を恐れ、ダム爆破に踏み切ったとみられる。

2023年6月6日/ウクライナ、首都キーウ、南部ヘルソン州のロシア支配地域にあるカホウカ水力発電ダムの決壊について報告を受けるゼレンスキー大統領(Ukrainian Presidential Office)
スポンサーリンク