◎アントニー・ブリンケン米国務長官とセルゲイ・ラブロフ露外相は会談を「率直な話し合い」と呼んだものの、議論は平行線をたどった。
2022年1月21日/スイス、ジュネーブ、アントニー・ブリンケン米国務長官とセルゲイ・ラブロフ露外相(Alex Brandon/Pool/AP通信)

1月21日、米国とロシアの外相はウクライナ東部で進行中の問題を新たな紛争に発展させないために協議したが、事態打開の糸口は見いだせなかった。

アントニー・ブリンケン米国務長官とセルゲイ・ラブロフ露外相は会談を「率直な話し合い」と呼んだものの、議論は平行線をたどった。

ラブロフ外相はウクライナの国境近くに集まった屈強な10万人規模のロシア兵がウクライナに侵攻することはないと強調した。

ブリンケン国務長官は国境を越えた時点で侵略と見なし、厳しく対応すると警告した。

ロシアは2014年にウクライナ南東部のクリミア半島を併合し、クリミアを「自国の領土」と宣言したが、国際社会はこれを認めていない。

その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナからの独立を宣言した。ロシアは「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認したが、西側とウクライナは分離主義者をテロリストと見なしている。

脆弱な和平協定ミンスクⅡが締結された後もウクライナとテロリストの戦闘は続いており、これまでに両軍の兵士少なくとも14,000人が死亡、200万人以上のウクライナ人が土地を追われた。

ジョー・バイデン大統領は公式の場で「ロシアが侵攻しても米軍は対応に当たらない」と宣言し西側の同盟国を震え上がらせたが、「かつてない規模の経済制裁を科す」と強調し、ウラジーミル・プーチン大統領をけん制した。

プーチン大統領は米国とNATO(北大西洋条約機構)に厳しいTodoリストを提案し、NATOのさらなる東方拡大を「レッドライン」と呼んだうえで、最悪の事態をあり得ると警告している。ウクライナとジョージアはNATO加盟を求めている。

プーチン大統領は安全保障条約草案の中で、「ロシアの領土を攻撃できる範囲にNATO軍を配備しないこと」「ロシアの領土近くでのNATO軍の軍事活動禁止」「ウクライナのNATO加盟を認めない法的保証」などを求めた。

米国は来週中に書面で回答を出すと期待されており、その後さらに協議が行われる予定である。

ブリンケン国務長官は会談を「率直で実質的」と述べる一方、ラブロフ外相は「感情的なやり取りがないことを望んでいる」とけん制した。

ブリンケン国務長官はバイデン大統領の発言を引用し、「ロシアが国境を越えた場合、西側の同盟国と団結し、迅速かつ厳しく対応する」と警告した。

会談後、米国務省は声明で、「米国は相互主義の精神でロシアの懸念に対処するために、さらなる協議の場を設ける準備ができている」と述べた。

一部の専門家は、「欧州はロシアの侵攻を考慮し、既存のミサイル制限を破棄する可能性がある」と指摘した。これは1987年に締結され米国が2019年に破棄した中距離核戦略条約により定められたもので、中射程の弾道ミサイルと巡航ミサイルの廃棄を目的としている。

米国務省は声明の中で、「ロシアはサイバー攻撃を含む広範な非軍事作戦を利用し、隣国の安全保障を脅かし、侵略の糸口を見出そうとしている」と非難した。

AP通信によると、米国は今後数週間以内にウクライナに対する新たな「安全保障支援」を提供し、それを維持すると約束したという。米国は昨年、ウクライナに対戦車誘導ミサイルシステムや小型兵器を提供している。

ブリンケン国務長官は記者会見の中で、「イランとその核能力についても話し合った」と明らかにした。イランはロシアと緊密な関係を維持しているとアピールし、イラン核合意をめぐる一連の交渉で米国に圧力をかけている。

ラブロフ外相は「脅しているのはロシアではなくNATO」と述べ、「ウクライナ人を脅かしたことは一度もない」とこれまでの主張を繰り返した。「ロシアは領土内で軍隊を動かしているであり、ウクライナを攻撃する計画などありません...」

ラブロフ外相は、「来週、米国は提案に対する回答を書面で提出する」と述べたが、ブリンケン国務長官は「来週、書面でより詳細な懸念をロシアと共有する」と述べ、提案には応じないと示唆した。

一部の欧州諸国は東ヨーロッパの防衛体制強化に着手している。スペインは地中海と黒海で活動するNATO海軍に艦隊を送り、デンマークもフリゲート艦を送る予定。

フランスのマクロン大統領はルーマニアに軍隊を派遣すると申し出た。

イギリスはウクライナ軍に対戦車ミサイルと国境警備を支援する小隊を送った。イギリスのリズ・トラス外相は21日の熱烈な声明でプーチン大統領に、大規模な戦略的過ちを犯す前にウクライナから撤退し、辞任するよう呼びかけた。

一方、バイデン大統領は19日の記者会見でウクライナへの侵略と「軽微な侵入」を区別したことで西側の同盟国を混乱させ、火消しに追われた。

2022年1月12日/ロシア、南部ロストフ地域のカダモフスキー射撃場、ロシア軍のT-72B3戦車(Getty Images/AFP通信)
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