◎ロシアはウクライナ侵攻を否定しているが、西側諸国はテロリストに占領されたドンバスとルガンスクに対するロシア軍派遣は侵攻に他ならないと非難し、制裁を科した。
2022年2月21日/ウクライナ東部のドネツク人民共和国、ロシアの独立承認を祝う花火大会(Alexei Alexandrov/AP通信)

2月23日、ロシアの国営メディアはウクライナ東部のテロリスト国家に平和維持軍を送ると発表したウラジーミル・プーチン大統領を「メシア」として祭り上げた。

テレビの司会者たちは「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立承認を歴史的な日と歓迎し、地域の住民の苦しみは終わったと宣言した。

国営放送のキャスターであるオリガ・スカベエワ氏は22日に放送されたトーク番組の中でドンバス地方の住民に対し、「あなたたちはこの8年間、苦しみ、悩み、耐え抜いてきた」と語った。「ロシアはあなたたちを救います。ドンバスは防衛されるでしょう...」

テレビ評論家のソロヴィエフ氏は、国営ラジオの番組の中でプーチン大統領を絶賛した。「メシアは地域の安全を確保します。安心してください。あなたの横にはロシア軍が立っています」

国営チャンネル・ワンのドネツク特派員は、「過去数年で最高のニュースを聞き、地域は熱狂に包まれている」と報じた。「今、彼らは未来に自信を持ち、長年続いたドンバス戦争がついに終わると確信しました。私たちはロシアの到着を待っています」

プーチン大統領はドネツク・ルガンスクの独立と主権を公式に承認した後、「国民は決定を歓迎している」と述べていた。

しかし、一部の批評家はこの決定を有害と評価している。

投獄された野党指導者アレクセイ・ナワルニー氏は弁護士を通じて声明を発表し、「プーチンはウクライナを発展させず沼地に引きずり込むつもりだろうが、ロシアも同じ代償を払うことになる」と述べた。

ロシアの独立系ニュースサイトHolodが始めたフェイスブックキャンペーン「#I'm not staying silent(私は黙っていません)」にはプーチン大統領の決定を非難する投稿が数百件寄せられている。

それでも、多くの人がプーチン大統領の決断を心から支持し、一部はメシアと祭り上げている。

モスクワ在住の女性はAP通信の取材に対し、「もっと前に攻め込むべきだった」と語った。「ウクライナはドンバスの独立国家を蹂躙しています...」

世論調査機関レバダ・センターは、「ロシア人の半数以上がプーチン大統領の決定を絶賛するだろう」と述ベている。

ロシア当局はウクライナがドネツクとルガンスクに攻撃を仕掛けているという情報を積極的に発信してきた。

ロシアはウクライナ侵攻を否定しているが、西側諸国はテロリストに占領されたドンバスとルガンスクに対するロシア軍派遣は侵攻に他ならないと非難し、制裁を科した。

プーチン大統領は先週、「ドンバスで起きていることは大量虐殺だ」とウクライナを非難し、東西の情報戦争は一段と熱を帯びた。国営放送の人気ニュース番組や政治トーク番組はこの言葉を頻繁に使用している。

著名なニュースキャスターのドミトリー・キセレフ氏はウクライナ軍のドンバスに対する攻撃をナチスの残虐行為と比較し、プーチン大統領に対し「ジェノサイド」という言葉を使ったドイツのオラフ・ショルツ首相をこき下ろした。「ドイツはウクライナの大量虐殺を承認したようです...」

先週末、ドネツクとルガンスクの分離指導者は住民をロシアに避難させ、ウクライナ軍による攻撃が差し迫っていると主張し、総動員令を発動した。

国営メディアは、避難バスの列に並ぶ少女や幼児の姿を大々的に報じ、ウクライナ軍による大規模な砲撃があったと主張する場面も見られた。一部のメディアはウクライナ軍が意図的に市民を狙っていると報じている。

ウクライナのゼレンスキー大統領は19日にドイツで開催された安全保障会議で、「ソ連崩壊後にウクライナに残された核兵器を放棄するという合意(ブタペスト覚書)から手を引く」と述べ、火に油を注いだ。

ウクライナは世界3位の核兵器保有国だったが、1994年のブタペスト覚書に基づき、弾頭、戦略爆撃機、核関連施設などをすべて破棄している。

国営メディアはウクライナの核兵器開発能力に関する特集を組み、番組の司会者はこの警告を甘く見てはいけないと危機感を示した。

サンクトペテルブルクでは23日、ウクライナ侵攻を支持する珍しいショーが開催された。23日は退役軍人を記念する祝日「祖国防衛の日」である。

国営メディアは、数百人の活動家がロシアの国旗と横断幕を持って市街地に集まったと報じた。ある極右活動家は、「我々はドンバスを見捨てない」と語った。

AP通信によると、一部の参加者はショーの目的を理解しておらず、イベント後の食事を楽しみにしている人が複数いたという。

一方、モスクワに拠点を置く人権団体によると、ウクライナ侵攻に反対するプラカードを持ち行進した数人が警察に拘束され、どこかに連れ去られたという。

国営メディアは与党統一ロシア党の幹部がドネツクに建設された「守護者記念碑」に花を供える様子を大々的に報じた。

一部の政治アナリストは西側の経済制裁に懸念を表明している。

モスクワで活動する独立系アナリストはフェイスブックに、「制裁は厳しく、ロシアの経済に深刻な影響を与え、国民の生活はますます悪化するだろう」と投稿した。「ロシア人は二日酔いになって初めて、物事がうまく進んでいないことに気づきます」

AP通信の取材に応じたモスクワの匿名のアナリストは、「ひどいもんです」と語った。「制裁の影響を受けるのは支配層ではなく国民ですよ...」

2022年2月21日/ロシア、モスクワのクレムリン、ウラジーミル・プーチン大統領(Alexei Nikolsky/Sputnik/Kremlin/Pool/Getty Images/AFP通信)
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