◎ウクライナ軍、政府当局者、市民は2月16日に設定した国民統合の日に合わせて各地で国旗を掲揚した。
2022年2月16日/ウクライナ、北部国境付近の演習場、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と軍関係者(Ukrainian Presidential Press Office/AP通信)

2月16日、米国の政府高官はウクライナ東部国境付近から部隊の一部を撤退させるというロシアの主張は誤りであり、ここ数日で新たに7,000人規模の部隊が追加配備されたと明らかにした。

ロシア国防省は同日、2014年に併合したクリミア半島から撤退する装甲車の映像を公開した。また同省は、演習を終えた戦車の列車輸送を開始することも合わせて発表した。

しかし、15万人と推定されている部隊の大半はウクライナ東部と北部の国境付近や黒海で演習を続けている。

AP通信によると、取材に応じたバイデン政権の高官は、「ロシアはウクライナ近郊に兵士7,000人を追加配備し、その一部はつい最近到着した」と述べた。またこの高官は、「ロシアは偽情報を発信することでウクライナ侵攻の口実を作ろうとしている」と懸念を表明した。

AP通信によると、ロシアは「ウクライナ軍に殺された民間人のが見つかった」「米国とウクライナが生物、化学兵器を開発している」「西側諸国はウクライナ人を殺すためにゲリラを送り込んでいる」といった情報をインターネットなどで発信しているという。

APによると、この高官は機密情報を公に話す権限がなく、匿名を条件に取材に応じたという。主張の証拠は提示されていないが、高官は確かな情報筋から得た信頼できる情報と述べた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は15日、西側諸国との安全保障対話を継続する意向を示し、外務省は国境付近に配備した部隊の一部を撤退させると発表した。

しかし、西側諸国はこの主張を裏付ける証拠を確認できておらず、警戒を緩めるべきではないと主張している。

ドイツ政府は16日、「オラフ・ショルツ首相とジョー・バイデン大統領が電話会談を行い、ロシア軍の本格的な撤退が確認できるまで現在の体制を維持することに合意した」と声明を発表した。

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領もロシア軍の撤退を確認できていないと述べている。

ウクライナ軍、政府当局者、市民は2月16日に設定した国民統合の日に合わせて各地で国旗を掲揚した。

ゼレンスキー大統領は北部国境付近の演習場を視察し、最前線の兵士に警戒態勢を怠らず、西側の同盟国と協調して演習または任務にあたるよう求めた。

またゼレンスキー大統領は記者団に、ロシアが同日中にウクライナを攻撃する可能性があるという米情報機関の報告を引用し、ウクライナは団結して問題に対処すると強調した。

NATOのストルテンベルグ事務総長もロシア軍が撤退する兆しは見えないと警告し、脅威が常態化しているため、警戒態勢を緩めるべきではないと警告した。

ストルテンベルグ事務総長は16日にブリュッセルのNATO本部で開催された防衛相会議の中で、「NATOは欧州の中央および南東部に新たな戦闘部隊の配備を検討している」と明らかにした。

NATOの報道官によると、加盟国は今週、ロシアが侵攻を開始した場合に備えて、ロシアに最も近い国や黒海に、いつ、どのように部隊や兵器を展開するかなどについて検討している。

ストルテンベルグ事務総長は新たな戦闘部隊の配備を「欧州の防衛を強化するための措置」と呼び、ロシアの安全保障には影響を与えないと強調した。またフランスはルーマニアに追加の部隊を配備すると申し出たという。

ロシア外務省は16日、NATOの発言には「もはや関心がない」と述べた。

米国務省のプライス報道官は16日の会見で、「ロシア軍は減るどころか増えている」と述べた。

一方、ロシア外務省のペスコフ報道官は16日に戦争が始まるという西側の主張を「パラノイア」と呼び、「ロシア当局者は今日もよく眠れた」と西側をあざ笑った。

プライス報道官は記者にロシアの主張を信じるかと問われ、「いいえ」と答えた。「これはロシアの常套手段で、撤退宣言は絵に描いた餅であり、実際は正反対のことをやっています」

ゼレンスキー大統領は国民に向けた演説の中で、「我々は平和に幸せに暮らしたいという願いで結ばれている」と述べ、団結を呼びかけた。

ウクライナ全土で国旗がはためき、首都キエフの五輪スタジアムでは200mの国旗が掲げられた。

ロシアは2014年にウクライナ南東部のクリミア半島を併合し、クリミアを「自国の領土」と宣言したが、国際社会はこれを認めていない。

その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナからの独立を宣言した。ロシアは「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認したが、西側とウクライナは分離主義者をテロリストと見なしている。

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