◎国際社会は港湾都市マリウポリを含むロシア軍に包囲された地域への支援を急ぐ必要がある。
2022年3月11日/ウクライナ、東部ドネツク州マリウポリ(Evgeniy Maloletka/AP通信)

国連は11日、ロシア軍に包囲されたウクライナの一部地域が壊滅的な荒廃と人道的危機に直面していると警告した。

国連政治問題担当のディカルロ氏は11日、安保理の中で、「民間人および民間の施設に対する直接攻撃は国際法で禁止されており、戦争犯罪に相当する可能性がある」と警告した。

またディカルロ氏は、「ロシア軍はウクライナの北部、南部、そして東部のいくつかの都市を包囲し、首都キエフに続く地点に多くの部隊を集結させているという報告を受けた」と明らかにした。

ドネツク州の港湾都市マリウポリ、第二の都市ハリコフ、スミ、チェルニヒフなどでは住宅地や民間インフラに対する砲撃や空爆が相次ぎ、死傷者が急増している。

ディカルロ氏はロシアに対し、「これらの都市への攻撃はいかなる理由があろうと容認できず、恐ろしいものだ」と述べ、厳しく非難した。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、2月24日以来、民間人少なくとも564人の死亡を確認し、1,000人近くが重軽傷を負ったという。ただし、激戦地の調査はほとんど進んでおらず、実際の死傷者数はこれよりはるかに多い可能性がある。

犠牲者の多くは戦車の砲撃、ミサイル、空爆など、広範囲に影響を与える爆発性兵器で死亡した。

さらに、OHCHRはロシア軍が人口密集地でクラスター爆弾を使用したという信頼できる報告を受けている。クラスター爆弾は国際人道法で禁止されている。

世界保健機関(WHO)は3月10日時点で、医療施設、医療従事者、救急車に対する26件の攻撃を確認し、少なくとも12人が死亡、34人が負傷したと報告している。 これにはマリウポリの小児病院に対する空爆も含まれる。

ディカルロ氏は民間人、住宅、病院、学校、幼稚園が標的になったことについて、「許しがたく、耐え難い」と述べ、国際人道法違反の疑いがある案件をひとつ残らず調査し、加害者に責任を負わせなければならないと強調した。

またディカルロ氏は、各地で人道支援物資の提供が続いており、50万人以上に物資が届いたと明らかにした。

国連と関係機関は各地の人道的ニーズに対応する計画を策定しており、主要国と国際金融機関はこの計画に15億ドル以上を提供する予定である。

2022年3月9日/ウクライナ、マリウポリの小児病院(Evgeniy Maloletka/AP通信)

国際社会は港湾都市マリウポリを含むロシア軍に包囲された地域への支援を急ぐ必要がある。

国連とウクライナ当局によると、3月9日~11日の間に人道回廊から国外に避難した市民は10万人を超えたという。9日には6つの人道回廊のうち5つが機能し、5万人以上が避難した。しかし、一部地域の避難ルートは機能せず、多くの民間人がロシア軍の攻撃にさらされた。

国外に逃れたウクライナ難民は11日時点で250万人を超え、ウクライナ以外の第三国の市民も国際法に基づき、差別なく安全が保障されることを望んでいる。

ディカルロ氏は停戦交渉の必要性を強調し、双方の代表は話し合い、人道的危機の解決に向けた取り組みを進めなければならないと述べ、最優先事項は「人道と停戦の確保」と訴えた。「対話と外交の論理は戦争に勝ります。人道と停戦を確保しなければ、私たちは誰も見たことのない大惨事を目撃することになるでしょう...」

またディカルロ氏は、「最も憂慮すべきことは、暴力が平和と安全の世界的な枠組みにリスクをもたらすこと」と警告し、次のように付け加えた。「私たちはこの戦争に終止符を打つために、できる限りのことを今すぐしなければなりません。今すぐです」

ゼレンスキー大統領は12日、欧州の各都市に宛てたビデオメッセージの中で、「戦争で子供を失った家族の心は壊れている」と述べ、子供の犠牲者をこれ以上増やさないための支援を各国に求めた。

ウクライナ当局によると、12日時点で少なくとも79人の子供が犠牲になったという。

またゼレンスキー大統領は、ロシア軍に囲まれた港湾都市マリウポルの窮状を訴えた。ウクライナ軍によると、マリウポリに対するロシア軍の攻撃は昼夜を問わず続き、激戦地周辺の住宅や施設は粉々に破壊されたという。

ゼレンスキー大統領は9日の小児病院空爆を非難し、子供を守るためにはウクライナ全土を飛行禁止区域に設定する必要があると改めて呼びかけた。「これは憎しみです。ロシア兵は子どもたちを殺しています。病院を空爆し、妊婦や子供を殺そうとしました。これらの恐ろしい攻撃がウクライナで繰り広げられています。 何十もの病院、何百もの学校、大学、保育園が破壊され、住宅地は焼け野原になりました」

「ロシア軍は教会やモスクも爆撃しています。教会で安らぎが得られないことを想像してみてください」

ゼレンスキー大統領はウクライナだけでなく、欧州大陸の文化や生活様式を守るためには支援が必要と呼びかけ、ウクライナの空を守るようNATO(北大西洋条約帰庫)に訴えた。

AP通信によると、マリウポリでは11日深夜も戦車の砲撃を受けたビルが燃え続けていたという。消防士は防衛や負傷者の救護にあたっている。

2022年3月11日/ウクライナ東部マリウポリの病院、医療従事者たち(Evgeniy Maloletka/AP通信)
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