◎ロシア軍はミサイルとイラン製カミカゼドローンでウクライナのエネルギーインフラを執拗に攻撃している。
2022年10月19日/ウクライナ、首都キーウの地下鉄駅構内(Emilio Morenatti/AP通信)

ウクライナ送電大手ウクルエネルゴ社は19日、ロシア軍のミサイル攻撃でさらなる停電が発生する可能性があると警告し、全国民に20日の午前7時までにスマートフォンなどの充電をすべて終えるよう呼びかけた。

ロシア軍はミサイルとイラン製カミカゼドローンでウクライナのエネルギーインフラを執拗に攻撃している。

ウクルエネルゴ社は声明で、最大4時間程度の大規模停電が発生する可能性があると警告した。

また同社は携帯、懐中電灯、その他バッテリーなどの充電を20日早朝までに終えるよう呼びかけた。さらに、停電が水道事業者にも影響を与える可能性を考慮し、市民に水を備蓄し、防寒対策の準備を進めるよう求めた。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領も18日のビデオ演説で国内の発電所の3割が破壊されたと報告している。

ウクルエネルゴ社はこの10日間の攻撃で多くの発電所が被害を受けたと認め、送電系統を保護するために20日に発電量を意図的に減らすとした。

同社によると、これは送電系統の「微妙なバランス」を保つための措置で、実施しなければより広範なブラックアウトを引き起こす可能性があるという。

また同社は、「20日の午前7時から午後10時まで全土で制限がかかる可能性がある」とし、市民に対し、同社のホームページを確認し、自分の住む地域の停電時間を把握するよう呼びかけた。

散発的な停電は首都キーウを含む一部の都市に影響を与えている。

ロシア軍のミサイルは前線から遠く離れた西部リビウなどにも到達し、発電所・ガスパイプライン・送電鉄塔などが被害を受けたとみられる。

政府は国民に対し、夕方以降の電力使用を控えるよう促している。

欧米の指導者たちはインフラへの攻撃を厳しく非難している。

EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長は19日、「ロシアによる民間インフラ、特に電力設備に対する攻撃は戦争犯罪だ」とツイートした。

一方、ロシアは19日、ウクライナ4州の併合地域に戒厳令を発令した。

戒厳令は対象地域のセキュリティチェックと移動制限を意味する。しかし、この4州にとどまっているウクライナ市民はすでにロシア軍の占領下にあり、戒厳令の有無にかかわらず、危機的な状況に置かれている。

プーチン(Vladimir Putin)大統領は戒厳令を布告したが、ロシア軍は4州を完全に支配できておらず、戒厳令がどのように機能するかは不明だ。

戒厳令対象地域の南部ヘルソン州と東部ドネツク州では激戦が続いているとみられる。

ロシア領の西部ブリャンスク州、南部ベルゴロド州、南西部クラスノダールなど、ウクライナ国境沿いの地域でも移動制限が課される予定。2014年にロシアに併合されたクリミア半島も同様である。

バイデン(Joe Biden)米大統領は19日、プーチン氏は選択肢を失いつつあるという見方を示した。

バイデン氏は声明で、「プーチン氏はウクライナの市民を残忍に扱い、威嚇して屈服させる以外に手段がないようだ」と語った。

南部ヘルソン州の親ロシア首長はウクライナ軍の猛攻を抑えることができず、州都ヘルソンを奪われる恐れがあるとして、市民にロシア領に避難するよう呼びかけている。

同州のサルド(Vladimir Saldo)首長は5〜6万人の市民がドニエプル川を渡ると説明した。

しかし、ウクライナ当局は市民が自発的に避難しているのではなく、強制連行されている可能性もあるという見方を示している。

またウクライナ当局は、「ロシアは前線近くのドニエプル川に市民が集まっていると偽情報を流し、ウクライナ軍に攻撃を思いとどまらせ、時間を稼ごうとしている可能性がある」と指摘している。

ウクライナ政府は戒厳令が出た4州の市民にロシアの呼びかけを無視するよう警告している。

占領地からの市民の移送や強制送還は戦争犯罪である。

2022年10月19日/ウクライナ、首都キーウの地下鉄駅構内(Emilio Morenatti/AP通信)
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