◎ロシア軍は東部ルハンシク州とドネツク州の完全制圧を目指している。
2022年6月8日/ウクライナ、首都キーウ郊外、偵察用ドローンを飛ばすウクライナ兵(Natacha Pisarenko/AP通信)

ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は8日、「東部ルハンシク州セベロドネツクの戦いがドンバスの運命を左右する」という見解を示した。

ゼレンスキー氏はビデオ演説の中で、「ドンバスの運命はそこで決まる」と語った。

ロシア軍はルハンシク州とドネツク州の完全制圧を目指しており、ルハンシク州でウクライナが唯一保持するセベロドネツクに猛攻を仕掛けている。

ゼレンスキー氏は「ウクライナ軍は敵に大きな損失を与えている」と述べた。しかし、最前線で指揮を執るルハンシク州政府は劣勢に立たされていると報告している。

同州のガイダイ(Serhiy Haidai)知事は8日、地元メディアのインタビューの中で、「ロシア軍の猛攻でセベロドネツクの街並みは一掃され、前線の特殊部隊は撤退を余儀なくされた」と語った。

ガイダイ氏はウクライナ軍は押し戻されていると述べる一方、「ロシア軍が完全に街を支配したとは言い切れない」と説明した。

セベロドネツクと近郊のリシチャンスクには市民約1万5000人がとどまっているとみられる。

ロシア国防省は8日、ドンバスのウクライナ軍は多くの人員、武器、装備を失っていると発表した。

ドンバスの大部分は2014~2015年のドンバス戦争で独立したルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国の支配下に置かれている。ロシア軍はこの両国と協力してウクライナ軍に攻撃を仕掛けているとみられる。

ウクライナ南部に滞留している2000万トン以上の穀物の運命もハッキリしていない。

国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は8日、ウクライナ侵攻がもたらす危機は刻一刻と悪化し、16億人が影響を受けていると警告した。「戦争が世界の食料安全保障、エネルギー、金融に与える影響は深刻であり、加速しています...」

世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ(Ngozi Okonjo-Iweala)事務局長は8日に放送された英BBCニュースのインタビューで、「食料危機は何年も続く可能性がある」と警告した。

オコンジョイウェアラ氏によると、アフリカ諸国の状況は特に深刻で、小麦と肥料不足の解消が急務だという。

戦争はロシアの小麦と肥料の輸出も妨げている。

国際金融協会(IIF)は8日、ロシアの経済は西側の制裁、企業の大量流出、輸出の崩壊により、年末までに15%縮小し、2023年にはさらに3%縮小すると予想している。

またIIFは欧州がロシア産エネルギーを完全に遮断した場合、この数字はさらに悪化する可能性があると警告している。EUは海路で輸入されるロシア産原油を段階的に減らし、年内に停止する予定。

国連によると、ウクライナ国内で死亡した市民は確認されているだけで4200人を超え、5000人以上が負傷。両軍の死者は数千から数万人にのぼり、1400万人以上が避難を余儀なくされた。

2022年6月8日/ウクライナ、東部ドネツク州、塹壕を掘るウクライナ兵(Bernat Armangue/AP通信)
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