◎イスタンブール条約は10年前にトルコのイスタンブールで署名された欧州評議会の国際人権条約。暴力の防止、被害者の保護、そして加害者に与えられる免責を排除することを目的としている。
2021年3月19日/トルコ、イスタンブール、抗議者たち(EPA通信)

3月19日、トルコ議会は女性を保護するために設計されたイスタンブール条約から撤退することを決めた。

イスタンブール条約は10年前にトルコのイスタンブールで署名された欧州評議会の国際人権条約である。発効は2014年、批准国は2021年3月時点で33ヵ国。

同条約は暴力の防止、被害者の保護、そして加害者に与えられる免責を排除することを目的としており、批准国は条約の規則に法的に拘束される。

しかし、トルコの保守的なレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と議会は、性的指向を理由とする男女平等と無差別の原則がイスラム家族の価値観を損ない、同性愛を促進すると主張してきた。

欧州の最高人権団体である欧州評議会のマリヤ・ペイチノビッチ・ブリック事務総長はトルコ議会の決定を「壊滅的」と呼び、怒りをあらわにした。

「イスタンブール条約の放棄は、女性の権利と基本的人権を保障するという取り組みから大きく後退することを意味し、女性を保護するために行動してきたトルコと欧州全体に悪影響を及ぼすでしょう」

イスタンブールで抗議活動を行った女性たちは「一人で出歩かない」というスローガンを掲げ、議会の決定に抗議した。

一方、ゼラー・ザムラット家族労働社会サービス大臣はソーシャルメディアの投稿で、トルコは女性の権利を憲法で保障していると述べたが、イスタンブール条約から撤退した理由は明らかにしなかった。

トルコの野党、共和人民党は議会の決定を非難し、「条約撤退は女性を二級市民と認め、殺すことを意味します」とツイートした。

トルコの人権団体「WeWill Stop Femicide Platform」によると、昨年国内で殺害された女性は少なくとも300人にのぼるという。ただし、容疑者不明の事件が数十件存在するため、被害者はさらに増える可能性がある。

2018年5月に首都アンカラで23歳の女学生がレイプされ殺害された事件は広範な怒りと抗議活動を引き起こした。容疑者2名は高層ビルのオフィスで女学生をレイプしたのち殺害し、遺体をビルの窓から投げ落として自殺に見せかけた。首謀者は終身刑、もう一人は懲役18年9カ月の実刑判決を受けている。

WeWill Stop Femicide Platform」の事務局長は声明で、「撤退を却下させるために行動します」とツイートした。

人権法を専門とする学者で弁護士のケレム・アルティパルマック氏はAFP通信の取材に対し、条約の放棄を1980年の軍事クーデターに例えている。

「議会はイスタンブール条約だけでなく、立法権と行政権を廃止しました。文民政府であれば、今回のような決定には至らなかったでしょう」

20年近くトルコを支配している敬虔なイスラムサポーターのエルドアン大統領は、女性の権利を却下し、保守主義を促進したと非難されている。

2018年6月1日/トルコ、イスタンブール、女性学生レイプ殺人事件に抗議する市民(ADEM ALTANVIA/GETTYIMAGES)
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