考古学者チームによる新発見

セント・アンドルーズ大学、バーミンガム大学、ウォーリック大学、グラスゴー大学、ウェールズ・トリニティ・セント・デイビッド大学の考古学者チームは、ストーンヘンジ近くで先史時代のものと思われる新たな遺構を発見した。

調査によると、ひとつ当たりの直径は10m超、深さ5mを超えるシャフト状の穴が2kmの範囲に渡って数えきれないほど設けられていたという。

それらの巨大遺構は、ストーンヘンジから3km離れたダリントンウォールの古代集落を取り囲むように形成されている。

詳細調査を行ったセント・アンドルーズ大学地球環境科学部のリチャード・ベイツ博士たちによると、「同地域一帯の地盤は新石器時代、今から約4500年前に構築されたもの。ストーンヘンジにおける新発見のひとつとして記憶されるだろう」と述べた。

またチームは、20本以上のシャフト状ホールが聖域への境界として機能した可能性を指摘。現代社会でいう標識、人々を目的地へ誘(いざな)う目印だったのではないか、と考えているようだ。

ベイツ博士はBBCの取材に対し、「我々は広大な敷地を人工衛星などに搭載した観測機器からリモートセンシングし、さらに細心の注意を払いながらサンプリングを採取した。これにより、今回発見された先史時代のものと思われる遺構をより複雑かつ正確に洞察できるだろう」と述べた。

ストーンヘンジは、首都ロンドンの西約200km、南部ソースベリーの北西約15kmに位置する世界で最も有名な列状列石群(ストーンサークル)である。世界文化遺産に登録(1986年)され、数えきれないほどの考古学者たちが現地調査を行ってきた。しかし、その実態は今でも謎に包まれており、分からないことの方がはるかに多い。

円形状に配置されたいくつもの直立巨石は、紀元前2500年~紀元前2000年頃に設置されたと考えられている。そして、巨石を囲む堀や壁は紀元前3100年以前のものだという。

高さ7m超の門型組石「トリリトン(驚異の三石)」5組をセンター付近に据え、直径100mほどのサークルライン上に高さ4~5m程の立石(メンヒル)が30個等間隔で配置されている。

設計者は天文学に精通した者と考えられており、また、当時としてはかなり高度な技術(巨石が倒れないよう地面に凹凸を設けるなどの工夫あり)が用いられており、各分野のスペシャリストたちが指揮を執り、計算しつくしたうえで巨石を配置したものと考えられている。

ただし、その設置目的については、「太陽崇拝」「古代の天文台」「礼拝堂」などと言った意見が挙げられているものの、いまだ結論だ出ていない。

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ストーンヘンジの謎

チームの一員として調査に参加したティム・キナード氏は、「サンプリングされたシャフトの堆積物には、これまで知られていなかった当時の環境情報や魅力的なアーカイブが詰まっている」と述べた。

今回発見された先史時代の遺構を研究することによって、ストーンヘンジが4000年以上に渡って紡いできた風景、歴史の詳細な物語が解明されるかもしれない。

ストーンヘンジ、世界遺産ナショナルトラスト考古学者のニックス・ナスホール博士はBBCの取材に対し、「驚くべき発見であり、胸が高鳴っている」と述べた。

またナスホール氏は、「ストーンヘンジの建設者たちは、ダリントンウォールの古代集落で生活し、現代史の中で最大の謎のひとつ、列状列石群を築いたのだろう。今回の発見は、より広い範囲で当時の様子を解き明かす重要なカギになる。私たちの先祖はどのような考えや信念をもってストーンヘンジを造ったのか。想像もつかないような答えがもたらされるかもしれない」と付け加えた。

ストーンヘンジ・ヒドゥン・ランドスケープス・チームは、最先端の考古学的フィールドワークと大昔から変わらぬ手掘り調査を組み合わせ、今回の大発見に至った。今後、この一帯で繰り広げられたであろう物語に全く新しい章が追加されることになる。

今回の発表は、毎年恒例のストーンヘンジ集会で実施される予定だったが、コロナウイルスの影響で2020年大会は中止され、昨日オンラインで実施された。

2019年3月、同地で発見された大規模な先史時代の儀式の証拠は、イギリスで最初に執り行われた大衆祭と考えられている。

ダリントンウォール、マーデン、マウントプレザント、ウェスト・ケネット・パリセード・エンクロージャの4遺跡で見つかった131匹の豚の骨が調査され、結果、住人たちによる食事会が開かれていたのではないか、と結論づけられた。

豚の骨を同位体分析により調査したところ、スコットランド、イングランド北東部、西ウェールズなど、イギリスの各地で育てられた個体であることが示されたという。考古学者たちは、「ゲストが各自の地元で育てた豚を持ち込み、食事会を行ったのではないか」と予想している。

カーディフ大学の研究指導者を務めるリチャード・マジウィック博士は、「食事会と思われる集まりは、イギリスで最初の文化的イベントだったのかもしれない。食事(豚)を各自が持ち寄るスタイルも興味深い」と述べた。

専門家たちは、同地で開催された集まりの出席要件に、”寄付(豚)”が必要だったのかもしれないと考えている。また、寄付する豚は出席者たちと共に地元を旅立ち、道程の中で育てる必要があったのかもしれない。

豚肉を長期保存する技術が4000年以上前に存在した否かは不明である。恐らく、数百kmの道程を豚も歩き、育ち、そして、現地で食事として提供されたと考えるべきだろう。ストーンヘンジは謎に満ちている。その謎が今回の発見によって多少なりとも解けると期待したい。

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