◎トルティージャは卵、揚げたジャガイモ、玉ねぎなどを混ぜて焼くオムレツのような料理。スペインで広く知られている家庭料理のひとつだ。
スペインの家庭料理トルティージャ(Getty Images)

スペインを代表する家庭料理「トルティージャ(スペイン風オムレツ)」の調理法をめぐって、SNSで激しい舌戦が繰り広げられている。

この論争はトルティージャの人気店でサルモネラ菌が原因とみられる食中毒が発生したことを受け、勃発した。

トルティージャは卵、揚げたジャガイモ、玉ねぎなどを混ぜて焼くオムレツのような料理。スペインで広く知られている家庭料理のひとつだ。

首都マドリード当局によると、サルモネラ菌を検出したレストラン「カサ・ダニ(Casa Dani)」は「ふわふわ(半熟)」のトルティージャを提供する人気店だという。

先週、この店でトルティージャを食べた少なくとも59人が食中毒の症状を訴え、このうち6人が入院。店は一時閉鎖を余儀なくされた。

カサ・ダニは公式ホームページに声明を投稿。地元の保健当局と協力し、厨房にサルモネラ菌がないことを確認次第、営業を再開する予定とした。

同店は2019年のスペイン・ポテト・トルティージャ選手権で優勝するなど、数々の賞を受賞し、ネットフリックスのグルメシリーズ「腹ぺこフィルのグルメ旅(原題:Somebody Feed Phil)」でも紹介されたことがある。

保健当局は今回の事件を受け、カサ・ダニがどのようにトルティージャを作っているかチェックすることとなった。

政府は30年ほど前に公布したガイドラインの中で、「卵は低温殺菌する。新鮮な場合も少なくとも75度の温度で火を通さなければならない」としていた。スペインで卵かけご飯を食べることはおすすめしない。

しかし、政府は昨年末、ガイドラインを一部緩和し、新鮮な卵は70度以上で2秒間または63度で20秒間加熱するよう定めた。

専門家によると、卵の白身は62~65度、黄身は65~70度で固まる。

マドリードのトルティージャ専門店「シルカール(Sylkar)」は公式ホームページに、「トルティージャに温度計を入れ、70度で2分ほど加熱すると、細菌はすべて死滅します」と書いている。同店のトルティージャはどちらかというと固めだ。

一方、地元ラジオ局は生物医学研究センター(CIBIR)の話を引用し、「スペイン人は水分の多いふわふわのトルティージャを好むが、子供、妊婦、高齢者にはリスクが高い」と報じた。

マドリード政府も市民に独自のアドバイスを行い、「特に夏はしっかり火を通すことが重要だ」と述べている。「トルティージャは固くてもおいしいのです」

また同政府は「トルティージャの中心部が固まり切らない状態」で調理を終え、常温で2時間以上放置するとサルモネラ菌などが発生する可能性があると警告している。

連邦政府のガイドラインも菌の発生を防ぐために、▽冷蔵庫などで長時間保存する場合は中心部までしっかり火を通す▽肉や魚などを調理した皿で卵を調理しない、などと推奨している。

また、ふわふわのトルティージャを作りたい場合は「生卵ではなく低温殺菌した卵」を使うよう勧めている。

しかし、SNSには▽ふわふわのトルティージャが食べたい▽ふわふわじゃないとトルティージャじゃない▽固めは嫌いなどと言ったコメントが多数寄せられている。一部のツイッターユーザーは「固めもおいしいよ」と固いトルティージャを応援している。

料理専門家によると、スペイン人のおよそ9割は新鮮な卵を使ったふわふわのトルティージャを好むという。

しかし、カサ・ダニの事件以来、他のトルティージャ専門店でも固めを注文する利用客が増えたと伝えられている。

国営テレビによると、マドリードより南の地域は固め、それ以外の地域はどちらかというと柔らかいトルティージャを好む傾向があるという。アンダルシア自治州のトルティージャはレンガのように固く、北部地域はやわらかいとのこと。

トルティージャは「玉ねぎを入れるか否か」という問題でも論争を引き起こしたことがある。

カサ・ダニのオーナーは最近公開したユーチューブ動画で、「タマネギを入れる人は今すぐやめなさい」と警告した。

しかし、料理人兼テレビ司会者であるアルギニャーノ(Karlos Arguiñano)氏はこれに反発。「タマネギを使わないトルティージャは欧州チャンピオン、タマネギ入りのトルティージャは世界チャンピオンだ」と玉ねぎ入りを推奨した。

スペイン、首都マドリードのレストラン、トルティージャを切り分ける女性(Getty Images)
スポンサーリンク