◎セルビアは深刻な水質汚染、大気汚染、産業廃棄物の不適切な処理に伴う公害に悩まれている。
2022年2月10日/セルビア、首都ベオグラードの大統領官邸前、リチウム鉱山の開発に抗議する人々(Getty Images/AFP通信)

2月10日、セルビアの環境活動家たちは政府がリチウム採掘および鉱山の開発計画を完全に停止するまで大統領官邸前に居座り続けると誓った。

保守的なヴチッチ政権は昨年、リチウム採掘を加速させる法案を準備したが、計画に反対する抗議デモが激しくなったため、採決を見送った。

議会は昨年、私有財産の収用手続きをより迅速に行える法律を施行し、リチウム鉱山開発を後押しした。

環境保護団体が主催する抗議デモは首都ベオグラードから全国に拡大し、権威主義者のアレクサンダル・ヴチッチ大統領に圧力をかけている。セルビアは4月3日に総選挙を控えている。

AFP通信によると、2月9日に大統領官邸近くで開催された抗議デモには数百人が参加したという。団体はベオグラードの市街地を行進し、政府庁舎前で集会を開いた。

AP通信の取材に応じた活動家は、「リチウム採掘を禁止する法律が施行されるまで抗議し続ける」と語った。「ヴチッチはセルビアを汚染し続けています...」

電気自動車のバッテリーなどに使用されるリチウムは再生可能エネルギーへの移行に欠かせない重要な金属のひとつと考えられている。

しかし、セルビアの活動家や団体は、リチウム採掘の過程で環境が破壊されていると主張し、政府に対応を改めるよう要求している。

鉱業大手リオ・ティント社によるセルビア西部のリチウム鉱山開発計画は活動家の怒りを引き起こし、数千人が首都ベオグラードの高速道路を封鎖する事態に発展し、政府は計画の見直しを余儀なくされた。

活動家たちは、リオ・ティント社を含む海外および国内企業のリチウム採掘を禁じる法律が必要と訴えている。リオ・ティント社はイギリスに本拠を置く多国籍企業で、オーストラリアでも活動家の抗議に直面している。

大統領官邸前にキャンプインした活動家たちは、「4月の総選挙が終われば、リオ・ティント社は戻ってくるかもしれない」と懸念を表明した。「ヴチッチは選挙が終わるまで事を荒立てないつもりです。あの男をセルビアから追い出してください...」

西部の環境保護団体に所属している女性はAP通信に、「リオ・ティント社は計画が白紙になった後も地域にとどまっている」と語った。

セルビアは深刻な水質汚染、大気汚染、産業廃棄物の不適切な処理に伴う公害に悩まれており、環境保護を軽視するヴチッチ大統領に反対する声は日増しに高まっている。

セルビアはEU加盟を目指しているが、環境問題と隣国コソボとの関係が足かせになり、交渉は思うように進んでいない。

セルビアの州のひとつだったコソボは1998年のコソボ紛争でセルビアと衝突し、2008年2月に独立を勝ち取った。ほとんどの西側諸国はコソボの独立を認めているが、セルビアとその同盟国であるロシアと中国は認めていない。

ヴチッチ大統領は北京2022冬季五輪の開会式に出席した首脳のひとりである。

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