◎カラムルザ氏はロシアのウクライナ侵攻に関する「偽情報」を広めたとして国家反逆罪で逮捕された。
2023年4月17日/ロシア、首都モスクワの地方裁判所、活動家のウラジーミル・カラムルザ氏(The Moscow City Court/AP通信)

モスクワ地裁は17日、著名な反政権派でジャーナリストのカラムルザ(Vladimir Kara-Murza)氏に禁固25年を宣告した。

カラムルザ氏はプーチン政権を声高に批判する人権活動家のひとり。昨年3月に米アリゾナ州下院で演説した際、ロシア大統領府を厳しく批判し、その翌月、ロシアのウクライナ侵攻に関する「偽情報」を広めたとして国家反逆罪で逮捕された。

カラムルザ氏はロシア大統領府近くで2015年に射殺された野党指導者ネムツォフ(Boris Nemtsov)元第1副首相と親しく、自身も2015年と2017年に毒物攻撃を受けたが、生還している。

ロシア当局はカラムルザ氏への攻撃を否定している。

カラムルザ氏は判決を「見せしめ」と非難し、自分への告発を旧ソ連の独裁者スターリン(Joseph Stalin)の見せしめ裁判になぞらえた。

人権団体や西側政府も判決を非難し、カラムルザ氏の即時釈放を要求した。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはカラムルザ氏を「弾圧の犠牲者」「無実の囚人」と呼んでいる。

侵攻から数日後、ロシア政府は自軍に関する「虚偽の情報」を広めることを禁じる法律を公布した。これにより、ウクライナ寄りの発言をしたり、侵攻を批判した多くのロシア人が逮捕された。

アムネスティは17日、判決を「大統領府による冷酷な弾圧のひとつ」と非難し、侵攻以来、プーチン政権による市民社会への組織的な抑圧は拡大・加速し続けていると断じた。

2022年にノーベル平和賞を受賞した人権団体「メモリアル(Memorial)」は判決を「とんでもない暴挙」と表現し、「批判を恐れる当局は反対派を力でねじ伏せることしかできない腰抜け」と非難した。「この判決は今日のロシアと文明国の致命的な違いを示すものです!」

米英独などの西側政府も判決を強く非難した。

クレバリー(James Cleverly)英外相は声明で「カラムルザ氏はロシアの違法なウクライナ侵略戦争を勇敢に非難しただけだ」と述べている。

英外務省は駐ロシア大使を召還し、この判決について説明を求めた。

米国務省はカラムルザ氏とその他の投獄された野党政治家を称賛した。「カラムルザ氏を含む人権と基本的自由のために立ち上がり、自分の人生を犠牲にして仲間のために尽くした無実の人々を称賛します...」

同省はカラムルザ氏を含む反政権派の政治家や活動家400人以上を解放するよう改めて要請した。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトゥルク(Volker Türk)高等弁務官は判決を「ロシアの法の支配と市民社会に対する新たな打撃」と非難した。

ロシア大統領府のペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は判決に関する質問を却下した。

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