◎ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は声明で、メリック・ガーランド米司法長官、クリストファー・レイFBI長官、アブリル・ヘインズ国家情報長官を含む8人の政府高官の入国を禁止し、米外交官10人を追放すると述べた。
2021年3月4日/ロシア、首都モスクワ、ウラジーミル・プーチン大統領(Alexei Druzhinin/スプートニク/クレムリン/Pool/AP通信)

4月16日、ロシア外務省はアメリカに新たな制裁を科すと発表した。これは4月15日にアメリカがロシアに科した制裁に対する報復措置である。

セルゲイ・ラブロフ外相は声明で、メリック・ガーランド米司法長官、クリストファー・レイFBI長官、アブリル・ヘインズ国家情報長官を含む8人の政府高官の入国を禁止し、米外交官10人を追放すると述べた。

<制裁対象>
・メリック・ガーランド米司法長官
・クリストファー・レイFBI長官
・アブリル・ヘインズ国家情報長官
・アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官
スーザン・ライス国内政策顧問
・ジョン・ボルトン元国家安全保障問題担当大統領補佐官
・ジェームズ・ウールジー元CIA長官
・マイケル・カルバハル連邦刑務所局長

また、ラブロフ外相は、ロシアで活動しているアメリカの非政府組織(NGO)をすべて閉鎖し、「ジョー・バイデン米大統領のロシアに対する内政干渉を終結させるための行動を開始する」と宣言したが、行動の詳細については言及しなかった。

報道によると、ロシアは米国大使館に第三国からの要因を支援スタッフとして送る可能性を否定し、米外交官の大使館訪問および国内の移動要件を厳しくしたという。

米財務省は4月15日、2020年の大統領選挙への干渉とソーラーウィンズハッキングへの関与に伴い、ロシアに新たな制裁を科した。

財務省は声明で、「ロシアの指導者の指示で2020年の米大統領選挙に影響を与えようとした16の組織または企業および16人の個人に制裁を科した」と述べた。報告によると、対象は「ロシアの諜報機関のサイバー活動を可能にする民間および国営企業」だという。

また、財務省はアメリカの金融機関に対し、ロシアのソブリン資産と特定の取引を行うことを禁止した。これを受け、ルーブル通貨は15日の取引で大きく値を下げた。

2011年3月10日/ロシア、首都モスクワ、ジョー・バイデン副大統領(当時)とウラジーミル・プーチン大統領(AP通信/Alexander Zemlianichenko)

ラブロフ外相はアメリカの動きを「極めて非友好的かつ挑発的」と非難したうえで、「ロシアはアメリカの事業活動に痛ましい打撃を与えることができるが、これらの措置は次の攻撃に備え、温存する」と述べた。「アメリカが内政干渉を続けるようであれば、ロシアは米国大使館と領事館の人員を450人から300人まで減らすよう命じるかもしれない」

一部の専門家は、「数十年に渡る不況で著しく衰退したロシアに冷戦時代の勢いはなく、アメリカとの経済戦争に勝てる見込みはない」と主張している。しかし、ロシアは数千発の核兵器を保有するだけでなく、中東欧でも圧力と影響力を強めており、アメリカと西欧はその力を極めて深刻に受け止めている。

バイデン大統領はウクライナ東部への侵攻問題を含む緊張の緩和と話し合いをウラジーミル・プーチン大統領に呼びかけ、特定の分野でロシアと協力すると示唆している。バイデン大統領は4月13日の電話会談でプーチン大統領に第三国での首脳会談を呼びかけた。

ラブロフ外相は、ロシアは首脳会談の申し出を前向きに考えていると述べたが、詳細については言及しなかった。

コロンビア大学の政治学者であるティモシー・フライ教授はAP通信の取材に対し、「バイデン大統領はノルドストリーム2やその他の国営企業には触れなかった」と述べた。ノルドストリームはバルト海を経由してロシアとドイツ間をつなぐ天然ガスパイプラインである。「国営企業に対する制裁は有効な戦略ですが、バイデン大統領はサミットを実現させたいと考え、プーチン大統領に手を差し伸べました」

より厳しい制裁は西側の企業を傷つけ、ロシアの市民の生活に大きな影響を与え、プーチン大統領の体制を強化する反米感情の結束を促すでしょう

制裁措置の強化はロシアを追い詰め、無謀な行動を引き起こし、ウクライナ東部国境付近のエスカレーションにつながる可能性がある。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は16日にフランスを訪問し、エマニュエル・マクロン大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相(オンラインで参加)とドンバス地方の緊張について話し合った。3首脳は会談後、ロシアに軍隊の撤収を要求する共同声明を発表した。

ロシアの支援を受ける分離主義者(ドネツク人民共和国・ルガンスク人民共和国)とウクライナはドンバス戦争の停戦協定「ミンスクⅡ」に2015年に合意したが、東部国境付近では小規模な衝突が続いている。ロシアは東部に派遣した兵士の数を明らかにしていないが、ウクライナは数万人のロシア軍が国境付近に配備されたと主張した。

モスクワの外交問題評議会を率いる外交政策専門家、ヒョードル・ルキアノフ氏は、「プーチン大統領はバイデン大統領の気候変動サミットの招待に応じると思われたが、制裁が足を引っ張る可能性がある」と予測した。「取引をする方法はありません。少なくとも、今、プーチン大統領はアメリカを信用していないでしょう」

ルキアノフ氏は、アメリカの圧力の高まりはロシアと中国を近づけることになるだろうと述べた。「ロシアはアメリカの動きを封じ込めるために、中国とのつながりを強化するでしょう。中国人はロシアとの協力に興味を持っています。ロシアはアメリカの経済制裁に対抗できる経済的なツールを欠いていますが、世界秩序に変化をもたらす力は持っています」

アメリカとロシアの緊張は著しく高まっているが、両国は多くの世界的なホットスポットに共通の関心を持っている。ロシアはアフガニスタンの混乱が中央アジアの旧ソビエト連邦加盟国に波及することを恐れており、タリバンとアフガン政府の和平交渉に強い関心を示している。

イランの核問題については、友好関係を維持しているにも関わらずイラン核合意でテヘランの核兵器保有をブロックしている。

2021年4月15日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジョー・バイデン大統領(トム・ブレンナー/ロイター通信)
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