◎経済制裁の影響を最初に受けるのは指導部ではなく市民である。
2022年2月28日/ロシア、首都モスクワの通り(Pavel Golovkin/AP通信)

ロシア国内で生活している人々は西側諸国の経済制裁の「熱」を感じ始めている。

モスクワ在住のタチアナ・ウスマノヴァ氏は2日、AP通信の取材に対し、「アップルペイが使えなくなった」と語った。

フェイスブックにも同様の投稿が相次いで寄せられている。

アップルはロシア軍のウクライナ侵攻を受け、ロシアでのiPhoneなどの販売を停止し、アップルペイなどのサービスも制限すると発表した。

数十社の国際企業がロシアから事業を撤退させている。大手自動車メーカーは車の輸出を停止し、ボーイングとエアバスはロシアの航空会社への航空機部品の供給とサービスを停止し、バットマン(ワーナーメディア)も撤退した。

米国をはじめとする西側諸国はかつてない規模の経済制裁をロシアに科しており、ロシアの大手銀行を国際決済システムSWIFTから排除し、ロシアへのハイテク輸出を制限し、ロシア中央銀行の外貨準備の使用を厳しく制限した。

モスクワやその他の都市に住むロシア人はルーブルを外貨に交換する際の問題、ATMの長い行列、特定の銀行のカードの不具合などの混乱に見舞われている。

モスクワの北東約250kmに位置するヤロスラブリの住民はAFP通信の取材に対し、「ATMで預金をおろせなくなった」と頭を抱えた。

一部の企業によると、食料品の価格も高騰し始めているという。

西部の都市ペルミで寿司デリバリー店を営むイリヤ・オクタヴィン氏はAP通信に、「食材の価格が30~40%値上がりした」と語った。

米ナイキ社は1日の夜にオンライン販売を停止し、「ロシアの顧客への商品の配送は保証できない」という声明をウェブサイトに掲載した。H&Mも2日にロシアでの販売をすべて停止すると発表している。

経済制裁の影響を最初に受けるのは指導部ではなく市民である。

反プーチンの野党政治家ユリア・ガルヤミナ議員は2日、「ロシアは物価の上昇、大量解雇、手当や年金の支払いの遅れに直面している」とフェイスブックに投稿した。「薬や医療器具の不足。自動車や航空機の老朽化、経済の貧弱化...国営メディアは1990年代は最悪の時代ではなかったと吹聴しています。なぜですか?」

ロシア人は1998年に経験した財政危機、1990年代後半の実質GDPがソ連崩壊直前の水準の6割程度まで落ち込んだことを覚えている。

ロシア当局は1日、「我々は説明している(We're explaining)」と題するウェブサイトを立ち上げ、経済制裁の圧力の下でも生活は機能すると語っている。このウェブサイトは物価の高騰を予想する専門家や、特定のサービスが機能しなくなるという心配を「偽物」と呼んでいる。

ロシア人の中には経済制裁よりロシア軍がウクライナに侵攻したことを心配する人もたくさんいる。

モスクワ在住のイワン・コズロフ氏はAP通信に、「良心と慈悲を持つまともな人間は戦争など望まない」と語った。「多くのロシア人がプーチンの大量虐殺を止めてほしいと心から願っています」

ロシアでは反戦感情が高まっている。何万もの人々が侵略の即時停止を求める公開書簡やオンライン署名に署名し、最も広く支持されたオンライン署名は数日間で100万人以上の支持を集めた。

2月24日の攻撃開始以来、全国各地でほぼ毎日街頭デモが行われている。政治活動で逮捕された個人や政治家を追跡している権利団体OVD-Infoによると、この1週間で7,000人以上の抗議者が拘束され、2日には600人近くが逮捕されたという。

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