◎ロシアとウクライナ産小麦は世界シェアの30%を占めている。
2022年5月18日/ニューヨークの国連本部、グテレス事務総長(左)とブリンケン米国務長官(Getty Images/AFP通信)

国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は18日、ロシアのウクライナ侵攻がもたらす食糧危機は世界に波及し、多くの貧しい国で飢餓や食料不安が発生すると警告した。

グテレス事務総長はニューヨークの国連本部で、「戦争が食料を含む物価の高騰を引き起こし、貧しい国々の食料不安を悪化させた」と述べた。

また、ウクライナの穀物輸出が戦前の水準に戻らなければ、「世界は何年も続く飢饉に直面する可能性がある」と警告した。

ウクライナ南部の港湾都市は戦争の影響で穀物を輸出できず、小麦、トウモロコシ、ひまわり油などの市場は壊滅的な影響を受けている。

ウクライナの穀物が失われた結果、代替品の価格が高騰した。国連によると、世界の食料価格は昨年同時期より30%も高くなったという。

グテレス事務総長は、「何千万もの人々が食糧難に陥る可能性がある」と警告した。「世界には十分な食料があります。しかし、戦争の問題を解決しなければ、我々は今後数ヶ月のうちに世界的な食糧危機に直面することになるでしょう」

またグテレス事務総長はウクライナの農作物生産と、ロシアとベラルーシが肥料の輸出を再開しない限り食糧危機は解決されず、それに代わる効果的な解決策はないとした。

グテレス事務総長は輸出を戦前のレベルに戻るために、ロシア・ウクライナ・米国・EUと連絡を取り合っていると説明した。

一方、世界銀行は18日、食糧危機に対処するプロジェクトに120億ドル(約1兆5000億円)の追加資金を提供すると発表した。

ロシアとウクライナ産小麦は世界シェアの30%を占めている。ウクライナ南部の港湾都市は毎月450万トンもの穀物や農産物を輸出していた。しかし、侵攻以来、ウクライナの貿易はほぼ停止している。

インドの小麦輸出禁止も危機を後押しする可能性がある。

国連によると、現在ウクライナには約2000万トンの収穫済み穀物が残され、これを輸出できれば世界市場にかかる圧力を緩和できるという。

ドイツのベーアボック(Annalena Baerbock)外相は18日、ロシアが食糧危機を悪化させたと非難した。「ロシアの穀物戦争は世界の食糧危機を煽っています...」

米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官は国連本部の演説で、「世界はプーチン大統領の戦争で近代史上最大の食糧安全保障危機に直面している」と述べた。

2022年5月5日/ウクライナ、ザポリージヤ州の支援物資配給センター(Evgeniy Maloletka/AP通信)
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