◎ナワルニー氏は執行猶予期間中に国外逃亡した罪に問われ、2年8カ月の実刑判決を受けた。また、第二次世界大戦の退役軍人の名誉を棄損した罪にも問われ、裁判所は罰金を支払うよう命じた。
2021年2月16日 AP通信/ロシア、モスクワの地方裁判所、アレクセイ・ナワルニー氏

2月20日、ロシアの地方裁判所は先日刑務所に投獄された野党党首アレクセイ・ナワルニー氏の控訴を却下した。

ナワルニー氏は執行猶予期間中に国外逃亡した罪に問われ、2年8カ月の実刑判決を受けた。また、第二次世界大戦の退役軍人の名誉を棄損した罪にも問われ、裁判所は罰金を支払うよう命じた。

ロシアの裁判所はウラジーミル・プーチン大統領に都合の良い判決を下すクセがある。

ナワルニー氏は昨年8月にソビエト産の神経ガス「ノヴィチョク」をロシアのエージェントに塗布されたが、ドイツの病院で治療を受け九死に一生を得た。

リハビリを終えたナワルニー氏は、先月17日に帰国した直後に逮捕され、秘密裁判にかけられた。なお、同氏は2014年の横領事件で有罪判決(執行猶予)を受けたが、事件への関与を否定しており、被害者とされる企業も「詐欺にあった覚えはない」と政府を厳しく非難している

現地メディアによると、ナワルニー氏は現在拘束されているモスクワのマトロスカヤティシナ刑務所から西部の強制収容所に送られる可能性が高いという。

2021年2月16日 AP通信/ロシア、モスクワの地方裁判所前、抗議活動に備える治安維持部隊

ナワルニー氏の逮捕と投獄はロシア全土で大きな抗議の波を引き起こしている。しかし、当局はこれを力でねじ伏せ、約11,000人を拘束し、その多くに罰金または7日から15日の懲役刑を科した。

ナワルニー氏は16日の公聴会でロシアの体制を見直し民主国家を建設するよう支持者とクレムリンに呼び掛けた。

アレクセイ・ナワルニー氏:
「政府の任務はあなたを怖がらせ、あなたを抑圧することです。宮殿にいる人(プーチン大統領)は私が消えることを願っています」

「公正な裁判官として働くことがどれほど素晴らしいか想像してみてください...誰もあなたに指図せず、有罪判決を強要されることもありません。私は隠れません。全世界が私の居場所を知っています」

クレムリンのスポークスマン、ドミトリー・ペスコフ氏はナワルニー氏の懲役刑がロシアの政治に与える影響について質問され、「彼の判決に関係なく、国は豊かに発展するだろう」と答えた。

西側はナワルニー氏の逮捕と平和的な抗議者に対する暴力を強く非難しているが、ロシアはこの非難を全て却下している。

欧州人権裁判所(ECHR)は16日の判決(罰金)と控訴の却下を非難し、「ナワルニー氏の命は危険にさらされており、速やかに解放しなければならない」と刑務所から釈放するよう命じた。ロシアはナワルニー氏がノヴィチョクによる中毒で入院した際、「自国にとどまっていれば適切な措置を講じた」と述べたが、西側はこの主張を却下している。

ロシア政府はECHRの判決を容認できない内政干渉として却下した。現地メディアによると、ECHRから書簡を受け取った国家通信社は、判決の修正を求める書簡を送り返したという。

これまでロシア政府はECHRの判決を尊重してきたが、受刑者の解放を要求されたことは一部もなかった。

プーチン大統領はECHRを嫌っており、昨年の憲法改正で国内法の優先度を国際法より高めた。当局は憲法に従いECHRの判決を拒否する可能性が高いと伝えられている。

控訴を失ったナワルニー氏は85万ルーブル(約120万円)を支払うよう命じられた。

ナワルニー氏は昨年のクレムリンPRビデオで取り上げられた第二次世界大戦の退役軍人たちを「腐敗者の手先」「良心のかけらもない」「裏切者」と呼んだ。

名誉棄損の罪で罰金を命じられたナワルニー氏は、「告発者(プーチン大統領)は地獄の炎で焼かれるだろう」と述べた。

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