◎リトアニアは現在、ベラルーシから押し寄せる不法移民の急増に悩まされている。
2021年8月4日/リトアニア、首都ビリニュスの南約38kmに位置するルドニンカイ軍事訓練場に建設された難民キャンプ(Mindaugas Kulbis/AP通信)

赤十字社は4日、ベラルーシの移民希望者を拒否するリトアニア政府の決定は国際法に準拠していないと警告した。

リトアニアは現在、ベラルーシから押し寄せる不法移民の急増に悩まされている。リトアニア政府はEU当局に「ハイジャック犯」と名指しされたヨーロッパ最後の独裁者ことアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が移民の背中を押していると主張している。

リトアニア内務省は今週初め、ベラルーシの国境警備隊が大規模な移民グループをリトアニアの国境付近に移送する映像を公開した。しかし、ベラルーシ当局はリトアニアの主張を言いがかりと却下している。

リトアニアはルカシェンコ大統領の迫害に直面した野党指導者などの亡命を受け入れ、ベラルーシ政府に非難されていた。昨年8月のベラルーシ大統領選に立候補したスヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏はリトアニアで政治活動を続けている。

リトアニアの国境警備当局は3日、法律に基づき、不正に入国を試みた不法移民180人を拘束し、ベラルーシに送り返したと述べた。しかし、赤十字社はこの措置を非難し、「政府には脆弱な人々を保護する義務がある」と警告した。

リトアニア赤十字社のエグル・サムチョバイテ氏はAP通信の取材に対し、「難民の地位に関するジュネーブ条約、EU基本権憲章、およびその他の人権文書は亡命を求める人々に対する暴力を容認しません」と述べた。

サムチョバイテ氏は、「入国を拒否された脆弱な人々は2国の間に閉じ込められ、命の危機に直面する」と指摘した。「リトアニアとベラルーシの国境に壁はなく、当局は亡命希望者に非人道的な力を行使した可能性があります。暴力はいかなる理由があろうと容認されません」

リトアニアとベラルーシの国境、約679kmに物理的な壁(フェンス)はなく、今年だけで約4,000人の移民がリトアニアに渡った。移民の大半はイラク人であり、リトアニア政府はベラルーシ当局がイラクの移民希望者を国内に移送し解き放っていると主張したが、ベラルーシはこの主張を却下している。

ベラルーシ政府は4日、「国境の町で非アラブ人の移民希望者がリトアニア当局の取り締まりを受け負傷し、その後死亡した」と主張したが、リトアニアの内相はこの主張を「おとぎ話」と呼び、却下した。

アグネ・ビロタイト内相は記者団に対し、「ベラルーシの主張はウソであり、グリム兄弟のおとぎ話です」と述べた。「ベラルーシはリトアニアを挑発しています。誤った情報を世界に向けて発信することは、ハイブリッド攻撃の典型です」

ベラルーシ国家国境委員会は4日遅くの声明で、リトアニアからベラルーシに無理やり押し返された5人(不法移民)が犬に噛まれ入院したと発表した。

ルカシェンコ大統領の背後にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が控えている。ルカシェンコ大統領は先日、「公正な大統領選挙に反対する抗議や反政府デモに対処できないような事態に陥った場合は、躊躇することなくロシア軍に支援を求める」と述べ、西側諸国を威嚇した。

EUはベラルーシがウクライナやジョージアのように切り裂かれることを恐れている。ロシアはウクライナのクリミア半島を併合したうえで分離主義者(ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国)の独立を支援した。ジョージアの分離主義者(南オセチア、アブハジア)はロシアの支援を受けて独立したが、国際社会はこれを認めていない。

2021年5月28日/ロシア、ソチの黒海リゾート、ウラジーミル・プーチン大統領とベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(スプートニク/クレムリン/プール/AP通信)
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