◎ロシア軍が原発から撤退するかどうかは不明である。
ロシア国営メディアは19日、プーチン(Vladimir Putin)大統領がウクライナ南部ザポリージャ原発へのIAEA(国際原子力機関)の訪問・査察を許可したと報じた。
プーチン氏は19日に行われたマクロン(Emmanuel Macron)仏大統領との電話会談でこの問題について協議した。
国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は18日、首都キーウでゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領と会談し、ザポリージャ原発周辺への攻撃を自殺行為と呼び、ロシアに原発周辺を非武装化するよう求めていた。
同原発を含む南部ザポリージャ州の一部は親ロシア勢力の支配下に置かれている。
国営タス通信はロシア大統領府の声明を引用し、「プーチン大統領は仏大統領との電話会談で、IAEA調査団に必要な支援を提供することに合意した」と報じている。
タスはロシア軍が原発から撤退するかどうかには言及していない。ゼレンスキー氏はロシア軍の完全撤退を査察の条件としている。
IAEAのグロッシ(Rafael Grossi)事務局長はこの決定を歓迎し、自ら原発の査察を主導する用意があると表明した。
またグロッシ氏は世界最大級の原発を危険にさらす行動を取らないことが重要と指摘し、原発本体と周辺地域への攻撃を控えるよう改めて要請した。
ウクライナ軍によると、ロシアはザポリージャ原発に軍事機器、兵器、兵士約500人を配備し、同原発のあるドニエプル川の対岸都市を攻撃しているという。
原発の周辺地域はこの数週間、激しい砲撃を受けているとみられ、原発に電力を供給している送電線や変電設備が破損するという懸念が高まっている。
ゼレンスキー氏は国連・トルコ首脳との共同記者会見で、ロシアは原発を意図的に攻撃していると改めて非難した。ロシアは原発周辺を非武装化するというグテレス氏の提案を拒否している。
ロシア外務省は19日、非武装化は原発をさらに脆弱な状態に置くことになる、と18日の主張を繰り返した。
一方、ロシアは国連安全保障理事会に書簡を提出し、ウクライナ軍がザポリージャ原発で企てているとされる「挑発行為」について詳述した。
ロシアは書簡の中で、「ウクライナは軽微な放射能漏れを狙っている」と主張している。また、ロシア軍が原発に兵器を配備したというウクライナの主張を改めて否定し、原発を攻撃しているのはウクライナ軍というこれまでの主張を繰り返した。