◎EU加盟国の指導者がEU法優位の原則に異議を唱えたのはEUの歴史の中で今回が初めて。
2021年10月6日/ポーランド、首都ワルシャワの裁判所前、右派政権の改革に反対する人々(Getty Images/AFP通信)

ポーランドの憲法裁判所は7日、ポーランドの憲法はEU法より優先されると裁定し、EU法優位の原則を否定した。

憲法裁判所の判事は、いくつかのEU法の条項と欧州司法裁判所の複数の判決はポーランドの憲法と矛盾していると判断した。なお、14人の判事のうち、2人はEU法優位の原則を支持した。

マテウシュ・モラヴィエツキ首相は3月、最高裁判所の判事任命におけるポーランドの新しい法律はEU法に違反していると欧州司法裁判所が裁定したことを受け、異議を申し立てた。

憲法裁判所は7日の判決の中で、「ポーランドはEU加盟時、欧州司法裁判所に最高の法的権限を与えておらず、EU法優位の原則は適用されない」と述べた。

これに対し欧州委員会は7日、ポーランドの憲法裁判所とは全く逆の声明を発表し、強い懸念を表明した。「EU法は憲法の規定を含め、加盟国の国内法より優先されます。欧州司法裁判所のすべての判決は、加盟国の裁判所を含むすべての加盟国当局を拘束します...欧州委員会は、EU法の統一された適用と完全性を保護するためにあらゆる手を尽くします」

EU加盟国の指導者がEU法優位の原則に異議を唱えたのはEUの歴史の中で今回が初めて。保守的なポーランド政府は、裁判所の判事任命はポーランドの憲法に基づいて行われていると主張したが、欧州委員会と多くの国際機関はこの主張を却下し、政府は与党寄りの判事を任命し司法の独立を損なったと批判した。

憲法裁判所は現在、与党「法と正義の統治党(PiS)」寄りの判事で構成されており、一部は元党員である。

欧州委員会は先月、ポーランドの新しい法律はEU法に違反しているという裁定に従わなかった政府に罰金を科すよう欧州司法裁判所に要請した。

ワルシャワの憲法裁判所前には「私たちはヨーロッパ人です」と書かれた旗を掲げる抗議者グループが集まった。最近の世論調査によると、回答者の約80%がEU加盟を今でも支持していると回答したという。

PiSは2015年の政権奪取以来、政府に忠実な者を司法機関に配置し、一部の最高裁判所判事は引退を強制された。欧州司法裁判所は司法当局者を懲戒する懲戒室はEU法違反と裁定し閉鎖を命じたが、実現していない。

ポーランドの憲法裁判所は昨年、人工中絶を事実上禁止したが、政府はこの判決を公表するのに3カ月を要した。

EUはポーランドに配分する予算約660億ドル(約7.3兆円)を保留しており、欧州委員会は今回の問題やLGBTQの権利の侵害などが予算の承認に影響を与えていると指摘した。

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