◎ロシアはアルメニア寄りだが、石油資源の豊富なアゼルバイジャンとのつながりも大切にしており、難しい対応を迫られている。
アルメニアとナゴルノカラバフ(アゼルバイジャン)の国境近く(Getty-Images)

アルメニア政府は14日、係争地ナゴルノカラバフで発生した戦闘を終結させることで合意したと発表した。

アルメニア政府高官は14日のテレビ演説で停戦を発表。14日の午後8時に発効したと説明した。国防省はこの演説の数時間前に砲撃を停止したと報告している。

アゼルバイジャン政府はまだ声明を発表していない。

両軍はナゴルノカラバフとアルメニアの国境近くで衝突したとみられるが、詳細は不明。

ナゴルノカラバフはアゼルバイジャンの領土とみなされているが、1994年に終結した分離戦争以来、アルメニア政府の支援を受ける分離主義勢力の管理下に置かれ、住民の大半はアルメニア人で構成されていた。

2020年に発生したこの地域をめぐる紛争では両軍合わせて6000人以上が死亡、数千人が負傷したと報告されている。両国は2020年11月、ロシアの仲介で停戦に合意した。アゼルバイジャンはナゴルノカラバフの大部分を奪還。アルメニア人は土地を追われた。

アルメニアとアゼルバイジャンは互いを「侵略者」と呼び、非難している。アルメニアはアゼル軍が先制攻撃を仕掛けたと糾弾。アゼルはアルメニアの砲撃で50人が死亡したと主張した。

アルメニアのパシニャン(Nikol Pashinyan)首相は14日、この戦闘で自軍の兵士105人が死亡したと報告した。一方、アゼルバイジャンはナゴルノカラバフで死亡したとみられるアルメニア兵100人超を無条件で引き渡す用意があると声明を出した。

パシニャン氏は14日の議会演説で、戦闘開始以来、アルメニア領10㎢がアゼルバイジャン軍の占領下に置かれたと主張した。

パシニャン氏はロシアに軍事支援、集団安全保障条約機構(CSTO)に支援を要請した。「私たちの同盟国ロシアとCSTOに支援を要請します。アルメニアへの攻撃はCSTOへの攻撃を意味します...」

CSTO加盟国はロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国。

またパシニャン氏は、「CSTOは軍事介入以外の選択肢も視野に入れている」とし、アルメニア軍が占領した地域の支配権をアゼルバイジャンが放棄すれば、将来の平和条約でナゴルノカラバフの領土保全を認める用意があるとした。

一部の野党議員はパシニャン氏がアゼルバイジャンの要求に屈し、一部の領土と引き換えにナゴルノカラバフを完全に放棄するつもりだと糾弾した。

首都エレバンの議会前にはナゴルノカラバフの奪還を支持する数千人が抗議デモを開き、パシニャン氏の追放を呼びかけた。あるデモグループはパシニャン氏を「反逆者」と呼んだ。

パシニャン氏はアゼルバイジャンの要求を受け入れる取引にサインしたとする報道を「フェイクニュース」と非難し、怒りをあらわにした。

国防相も同様の見解を示し、エレバンの抗議デモを「反逆罪に等しい蛮行」と呼んだ。

一方、ナゴルノカラバフの分離主義勢力を率いるハルチュニャン(Arayik Harutyunyan)氏は14日、一連の戦闘と騒動について、「ナゴルノカラバフ軍はアゼルバイジャンへの編入を認めず、戦い続ける」と声明を発表した。「独立国家のナゴルノカラバフ共和国は侵略者の脅威に立ち向かうと誓います...」

ロシアはアルメニア寄りだが、石油資源の豊富なアゼルバイジャンとのつながりも大切にしており、難しい対応を迫られている。

アゼルバイジャンと民族的につながりの深いトルコはアルメニアを非難している。2020年の紛争ではトルコがアゼル軍に提供したドローンが戦況に大きな影響を与えたと伝えられている。

アゼルバイジャンは2020年の和平合意に基づき、自国領とナゴルノカラバフの輸送回廊を完全に開放するようアルメニアに求めており、今回の戦闘は合意の早期履行を迫ったものと見る専門家もいる。

アゼルバイジャン軍は昨年の紛争でアルメニア軍をナゴルノカラバフから押し出している。パシニャン氏は当時の演説で、「停戦に応じなければアルメニア全土を占領される恐れがあった」と述べていた。

プーチン(Vladimir Putin)大統領は16日にウズベキスタン(上海協力機構首脳会議)でアゼルのアリエフ(Ilham Aliyev)大統領と会談する予定だ。

パシニャン氏も上海協力機構首脳会議に出席する予定だったが、今回の戦闘を受け、出席を見送った。

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