◎決選投票は4月24日に行われる予定。討論会は両候補が直接対決する唯一の場であり、有権者の注目を集めた。
2022年4月20日/フランス、パリ郊外のサン・ドニで開催されたテレビ討論会、マクロン大統領とル・ペン党首(Ludovic Marin/Pool/AP通信)

フランスのマクロン大統領は20日、大統領選テレビ討論会で極右国民連合のル・ペン党首を痛烈に批判し、左派支持者に投票を棄権しないよう促した。

マクロン大統領はル・ペン党首とロシアの関係、イスラム教徒の女性のスカーフを禁止しようとする計画などを厳しく批判した。

決選投票は4月24日に行われる予定。討論会は両候補が直接対決する唯一の場であり、有権者の注目を集めた。

マクロン大統領はル・ペン党首の国民連合が2014年にロシアの銀行から受けた融資を批判し、フランスの大統領にふさわしくないと一蹴した。また、イスラム教徒の女性が公の場で着用するスカーフを禁じる計画について、内戦を誘発すると警告した。

フランス国内におけるイスラム教徒数は西欧の中で最も多い。

一方、ル・ペン党首は、ロシア・ウクライナ戦争の影響でインフレが加速しているにもかかわらず、政府の対策は後手に回っていると批判した。

ル・ペン党首はフランス初の女性大統領に選出された場合、生活費を引き下げることを最優先事項にすると約束し、「自分は生活費の支払いに苦労している有権者のための候補である」と宣言した。

またル・ペン党首はマクロン大統領のせいでフランスは深く分裂したと指摘。コロナの大流行の前に国を揺るがした黄色いベスト運動について繰り返し言及した。「フランスを再びひとつにまとめ上げなければなりません。分断はいりません!」

2017年の討論会ではマクロン大統領がル・ペン党首のミスに付け込み、決選投票で圧勝したものの、今回の討論会はほぼ互角の殴り合いになったという見方が大勢を占めた。

各紙の世論調査によると、中道のマクロン大統領は左派支持者の取り込みに成功したように見えるという。世論調査会社イプソスは20日時点でマクロン大統領56.5%、ル・ペン党首43.5%と報告している。

しかし、前回の決選投票のような差がつく可能性は低いとみられ、両候補は10日の第1ラウンドで3位につけた急進左派のメランション氏の支持者を取り込もうと躍起になっている。

マクロン大統領はル・ペン党首にエネルギー政策を批判された際、「私はあなたとは違う」と反撃した。

マクロン大統領は、国民連合が2014年にロシアの銀行から受けた900万ユーロ(約12億円)の融資を繰り返し批判した。「ル・ペン氏が勝利すれば、フランスはこの借金のせいでプーチン氏との協議で不利な立場に立たされるでしょう」

「ロシアと協議する時、あなたは銀行家と話すことになる。それが問題です」とマクロン大統領は批判した。「あなたの利益はロシアの権力者と結びついています。この問題に関して言えば、あなたはフランスの利益を守ることはできません。あなたはロシアの権力者、プーチン氏に依存しています」

ル・ペン党首はプーチン大統領に肩入れしているというマクロン大統領の指摘に憤慨した。「私は完全に自由であり、誰の拘束も束縛も受けません。あなたの言うことはすべて虚偽であり、有権者もそう認識しています」

ル・ペン党首は「国民連合は融資を返済している」と指摘し、この問題をこの場で提起するマクロン大統領は不誠実だと批判した。国民連合はこの問題に何年も悩まされている。

一方、TV討論会が始まる数時間前、ロシアの投獄された野党指導者ナワリヌイ氏が国民連合の融資問題に言及し、フランスの有権者にマクロン大統領を支持するよう呼びかけ、ル・ペン党首はロシアとあまりにも密接に結びついていると指摘した。

ナワリヌイ氏は弁護士を通じてツイッターに、「ル・ペン氏が融資を受けた銀行はプーチンと結びついている有名なマネーロンダリング機関である」と投稿した。

ナワリヌイ氏は主張の証拠を示さなかったが、ル・ペン党首が勝利した場合、国民連合の融資はフランスの首を絞める危険なものになり得ると主張した。「これは単なる怪しげな取引ではない。フランスの政治家があの銀行から融資を受けていたとしたら、あなたはどう思うだろうか?」

世論調査で劣勢に立たされているル・ペン党首はマクロン大統領をノックアウトする一撃を食らわせる必要があった。しかし、同氏は不運なスタートを切った。

最初に発言するよう指名されたル・ペン党首は、討論会のオープニングベルが鳴り終わる前に話し始めたのである。最初の発言は音楽が邪魔でよく聞き取れず、一旦中断し、再度話し始めなければならなかった。そして、「すみません」と謝った。

言葉のキャッチボールが始まると、マクロン大統領はル・ペン党首の弱点を突いた。

普段はパワフルな演説家であるル・ペン党首も、マクロン大統領の挑戦的な発言にイラつき、いつものように流暢に話せない場面が目立った。また、同氏の最大の武器である強引さにも欠けていた。

それに対してマクロン大統領は、時に傲慢ともいえるほど自信に満ちた態度でル・ペン党首の弱点を突いた。マクロン大統領は偉そうに腕を組み、ル・ペン党首の話を聞いていた。

4月10日の第1ラウンドではマクロン大統領がル・ペン党首にひとまず勝利した。しかし、インフレに対する国民の怒りを味方につけつつあるル・ペン党首は2017年に比べると確実に差を詰めている。

2022年4月20日/フランス、パリ郊外のサン・ドニ、ル・ペン党首(右)とフランス・テレビジョンのCEO(Ludovic Marin/Pool/AP通信)
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