◎ル・ペン党首は1ヶ月前、マクロン大統領に10%近い差をつけられていた。
2022年4月8日/フランス、ナルボンヌの市場、国民連合のル・ペン党首(Joan Mateu Parra/AP通信)

フランスの主要メディアは8日、国民連合のル・ペン党首の支持率がマクロン大統領に肉薄し、決選投票は大接戦になると予想した。

マクロン大統領はロシア・ウクライナ戦争の停戦交渉に時間を割き、選挙戦のスタートが遅れた。また、プーチン大統領との交渉を積極的に行ったことが評価され支持率を伸ばしたが、定年を65歳に段階的に引き上げるなど、不人気な政策を推進していることがその後の支持率低下につながった。

各紙の世論調査によると、ル・ペン党首の支持率はマクロン大統領にかつてないほど迫っている。マクロン大統領は「絶対はない」と有権者に訴え、勝つと思って投票を棄権すれば大変なことになると繰り返し警告している。

ル・ペン党首は1ヶ月前、マクロン大統領に10%近い差をつけられていた。

しかし、二人の距離は一気に縮まり、ほぼ誤差の範囲になった。4月24日の決選投票に進むのは二人でまず間違いない。第1ラウンドは4月10日に行われる予定。

一方、もう一人の極右候補で反イスラム、反ゲイ、反LGBTQを公約に掲げているゼムール氏はレースから脱落した。

日刊紙ル・モンドは「ゼムール氏の選挙戦はウクライナ戦争で崩壊した」と報じている。ゼムール氏はプーチン大統領を繰り返し称賛していたことが問題視され、非難の弾幕に直面した。

またル・モンドは、「ゼムール氏の親ロシア的な態度は重荷である一方、ル・ペン氏は賢明にも、より穏健な視点に軸足を移した。彼女は難民の速やかな受け入れを表明したが、ゼムール氏は方針転換に2日かかった」と報じた。

強硬政策を緩めたル・ペン党首はゼムール氏の支持者を見事に吸い上げた。

一方、戦争効果をほとんど失ったマクロン大統領はEUの同盟国であるポーランドとの場外乱闘を引き起こし、有権者をウンザリさせている。

マクロン大統領は地元紙のインタビューの中でポーランド首相を「反LGBTQを主導するユダヤの差別主義者」と呼んだ。

ポーランド首相はインタビューの前、「マクロン大統領はロシアと会談して何かを成し遂げましたか?」と挑発していた。

プーチン大統領は2017年の大統領選でル・ペン党首を支持し、国民連合は現在もロシアの銀行から融資を返済している。しかし、ル・ペン党首は現在、戦争ではなくインフレ対策に焦点を当て、低中所得者層の支援を強化すると表明することで支持率を伸ばすことに成功した。

ガソリン、食品、電気、ガスなどの高騰が収まる気配はなく、ル・ペン党首の戦略は実を結びつつある。

マクロン大統領の集会に参加した女性はAP通信の取材に対し、「有権者は戦争ではなく国の経済状況に目を向けるべき」と語った。「家賃を支払うことに苦労しているフランス人がたくさんいます。これは恥ずべき事です。以前は左派に投票していましたが、今回は右派に投票します」

ル・ペン党首の集会に参加した男性は、「ル・ペンが勝つと確信している」と述べた。「彼女は進化しています。国民連合は国民に寄り添う政党になりました。マクロンのおかげで上流階級はより豊かになり、低中階級はより貧しくなりました。もうウンザリです」

ル・ペン党首は極端な政策をアピールするのではなく、有権者に理解されやすい穏やかな政策を前面に押し出し、穏やかなイメージを定着させることに成功した。

ル・ペン党首は今でも、移民を厳しく制限し、住宅、仕事、福利厚生に関しては「フランス・ファースト」を掲げ、公共の場でのイスラム教徒のスカーフを禁止すると宣言している。しかし、EU離脱は取りやめ、子猫を育てる穏やかなシングルマザーであることを強調し、支持率を伸ばした。

ゼムール氏と共和党の右派候補であるペクレス氏がつまづいたこともル・ペン党首を後押しした。2カ月前、ル・ペン党首とゼムール氏の支持率は拮抗していたが、今では15%近い差がついている。

マクロン大統領は中道右派だけでなく左派の票を確保することが急務となっている。しかし、中道左派と中道右派を組み合わせた新しい政治を行うと公約してから5年、多くの左派有権者が「金持ち大統領」とあだ名される男に幻滅している。

ル・ペン党首はインフレとワーキングプア問題を解消すると約束する一方、マクロン大統領は定年を65歳に段階的に引き上げ、教師の給与を成果に連動させるという公約で波紋を呼んでいる。

マクロン大統領は勝つと予想されているが、与党「共和国前進」の議員は懸念を表明している。

ベルヴィル議員はソーシャルメディアに、「この6年の間に起きたことを思い出してください」と投稿した。「ブレグジット、トランプ...私たちは選挙は重要であり、投票は重要であると有権者に伝えようとしているだけなのです」

2022年4月8日/フランス、ナルボンヌの市場、国民連合のル・ペン党首2(Joan Mateu Parra/AP通信)
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