◎EUは年末までに海路で輸入されるロシア産原油を段階的に削減・停止することに合意した。
イタリアの地元メディアは1日、同国のロシア産原油の輸入量が欧州諸国の中で唯一増えていると政府を批判した。
EUは年末までに海路で輸入されるロシア産原油を段階的に削減・停止することに合意した。これにより、EU圏内で消費されるロシア産原油のおよそ90%が制裁の対象となった。
この禁輸制裁は、シチリア島にあるイタリア最大の製油所のひとつを危険にさらすと懸念されている。
同国のドラギ(Mario Draghi)首相は制裁を歓迎したが、ロシアの石油大手ルクオイルが所有するシチリア島の製油所の問題にも対処しなければならない。
この製油所はイタリアのISAB Srl社が管理している。
地元メディアは、ロシアの原油を積んだタンカーが製油所に続々到着していると報じている。
AP通信によると、イタリアの5月のロシア産原油購入量は1日あたり約40万バレル、侵攻前の4倍に達したという。ルクオイル社は40万バレルのうち22万バレルの取引に関与している。
地元の日刊紙も「イタリアは欧州で唯一ロシア産原油の輸入量を増やした」と報じている。その他のEU加盟国が輸入量を減らした結果、イタリアのロシア産原油購入量は欧州6位から1位に急浮上した。
シチリア島シラクーサにあるこの製油所は精製、ガス化、電力コジェネレーションなどの部門で3500人を雇用しており、禁輸措置が始まる前に解決策を見つけなければ閉鎖される可能性がある。
イタリア政府は持続可能なエネルギーへの移行を推進しているため、製油所の雇用はウクライナ侵攻の有無にかかわらず、近々問題に直面すると予想されていた。
シラクーサの労働組合のひとつは地元メディアのインタビューの中で、「島民は不安を抱えている」と述べている。「製油所は島の基幹産業であり、多くの雇用を生み出し、島の家族にチャンスを与えてきました」
製油所の労働者も将来に不安を募らせている。
地元紙の取材に応じた男性は、「大変なことになる」と懸念を表明した。「解決策を見つけてほしいです。シチリアをつぶすわけにはいきません。製油所を中心に経済を回すというシチリアの選択は、ずっと前に決まったことです」
ある男性は「製油所を一時的に国有化してはどうか」と提案した。イタリアの憲法はエネルギーの緊急事態が発生した際の一時的な国有化を認めているが、ISAB Srl社との協議の結果、合意には至らなかった。
国有化できれば、ISAB Srl社はロシア以外の供給源を確保するために必要な資金を公費で賄うことができるため、操業を維持できると期待されている。
この製油所で精製されたガソリンとディーゼルは本土にも供給されている。