◎EUは圏内で消費する天然ガスの40%、原油の27%をロシアから輸入している。
ロシア国営ガスプロム社のパイプライン(Getty Images)

イタリアの石油・電力大手ENIは17日、ロシアの天然ガス供給量が契約のおよそ50%に減少したと報告した。

同社によると、ロシア国営ガスプロム社はこの2日間の供給量を半分に減らしたという。

同じような事態に直面しているドイツは、ロシア政府が欧州のエネルギー価格を押し上げるために、意図的に供給量を減らしたと非難している。

ガスプロム社によると、この供給量削減はバルト海を横断するガスパイプライン「ノルドストリーム1」の技術的な問題によるものだという。

EUは圏内で消費する天然ガスの40%、原油の27%をロシアから輸入しており、ロシアに年間約4000億ユーロ(約57兆円)支払っている。

EU加盟国はロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシア産エネルギーから脱却する取り組みを進めている。海路で輸入される原油は段階的に削減され、年末までに禁輸を達成できる予定。

天然ガスについては1年以内に輸入量を3分の2に減らすとしているが、全面禁輸にはかなりの時間がかかると思われる。

ロイター通信は伊政府筋の情報を引用し、「このままロシアが供給を抑制すれば、来週、ガスに関する警報を発令する可能性がある」と報じた。

地元メディアによると、ガスの需要が供給を上回ると予想された場合、隣国に融通を依頼したり、大手企業や個人に消費を抑えるよう要請を出す可能性があるという。

また火力発電所は出力を抑え、石炭火力やその他の発電所の出力を上げる措置も取られると予想されている。

スロバキア当局も17日、ノルドストリーム1から輸送されるガス供給量が半減したと報告した。

フランス政府は、「ノルドストリーム1の供給は6月15日に停止したが、他国から供給を受けている」と報告している。

オーストリアでもロシアのガス供給が大きく落ち込んだと報告されている。ロシア政府はこの供給削減を「計画的なものではない」と説明している。

ポーランド、ブルガリア、フィンランド、デンマーク、オランダのガス供給はルーブル建てを拒否したため、すでに止まっている。

一方、EU全体のガス貯蔵量は、米国のLNG(シェールガス)が大量に輸入されたことで増加した。

INGリサーチのアナリストによると、EU全体のガス貯蔵量は現在52%で、過去5年の平均をわずかに下回っているものの、昨年同時期の43%を大幅に上回っている。

ノルドストリーム1は7月11日~21日の間、定期検査による稼働を停止する予定。

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