◎オルバーン首相は「大勝利」と宣言し、拳を突き上げた。
2022年4月3日/ハンガリー、首都ブダペスト、勝利を宣言するオルバーン・ヴィクトル首相(Petr David Josek/AP通信)

ハンガリーのオルバーン首相は3日、議会選挙で勝利が確実となったことから勝利を宣言し、4期目の目標などを国民に宣伝した。

与党フィデス=ハンガリー市民同盟の支持者はブダペストの会場で、「GO!ヴィクトル!」「大勝利!」「俺たちのヴィクトル!」などと叫び、オルバーン首相を出迎えた。

オルバーン首相も演説で「大勝利」と宣言し、拳を突き上げた。

EUの問題児のひとりであるオルバーン首相はしばしば民主主義の後退や汚職の疑いで非難されてきたが、ロシア・ウクライナ戦争で難民を積極的に受け入れ支持率の底上げに成功した。

オルバーン首相は、「月から見えるほど大きな勝利。ブリュッセルからも丸見えだ」と述べ、EUの反対派を挑発した。

選挙管理委員会によると、開票率約91%の時点でフィデス=ハンガリー市民同盟が有効票の53%、親EU派の野党連合「ハンガリーのための連合」は34%強を獲得した。

<ハンガリー議会選2022 定数199議席 開票率91%>
フィデス 53.85%
・野党連合 34.28%
・祖国運動 6.32%
・その他

フィデス=ハンガリー市民同盟は前回選挙の49.27%(116議席)を上回ることが確実となった。

ロシア産エネルギーへの制裁に強く反対しているオルバーン首相は、「世界は今日、キリスト教民主主義政治、保守的市民政治、愛国主義政治の勝利を目にしました」と語った。「これが未来のヨーロッパです。我々は過去ではなく、未来に向けて進んでいます」

コバックス国務長官は政府庁舎で記者団の取材に応じ、「今回、多くの政党が選挙に参加したことで、ハンガリーの民主主義の強さを世界に示した」と述べた。「ハンガリーに民主主義は存在するのか、というナンセンスな話を最近よく耳にします。オルバーン政権のもと、ハンガリーの民主主義は弱まるどころか強化されました」

最新の世論調査によると、野党連合はフィデス=ハンガリー市民同盟に肉薄すると予想されていた。しかし、野党は首相候補に指名されたマルキザイ党首の地元でも与党候補に大きく水をあけられた。

急進的な右翼政党「祖国運動」は議席の獲得に必要な5%を超え、関係者を驚かせた。

野党や国際的なオブザーバーは公共メディアにおける政府寄りの偏向報道、オルバーン首相の同盟者による商業報道機関の支配、ゲリマンダー化した選挙地図などに注目している。

ワルシャワのポーランド科学アカデミーの政治学者ズグート博士はソーシャルメディアに、「オルバーンが勝利すれば、ハンガリーはさらに独裁的な方向へ進み、反体制派に厳しいシステムが構築されるだろう」と投稿した。「ハンガリーはもう戻れないところまで来ています。しかし、土俵は与党フィデスに有利な方向に傾いているようです」

野党連合のマルキザイ党首は3日遅くの演説で敗北を認めたが、「与党は自らが作り出した政治システムの下で勝利した」と指摘した。「我々はこのような結果になるとは思っていませんでした。極めて不平等な戦いになることは最初から分かっていました...フィデスの勝利に異論はありません。私たちはこの選挙が民主的で自由であったかどうか、議論を続けるつもりです」

一方、オルバーン首相は社会的・文化的な対立軸で選挙戦を展開していたが、2月のウクライナ侵攻を機にこのトーンを劇的に変え、国民に「平和か戦争」かを選択するよう訴えてきた。

オルバーン首相は野党が勝利すればロシアとのエネルギー貿易は破綻し、ハンガリー軍はウクライナに兵器を提供し、戦争に巻き込まれるだろうと主張したが、野党はこの主張を否定している。

野党はウクライナを支援し、EUやNATOのパートナーと足並みを揃えて行動するよう求めたのに対し、プーチン大統領の友人であるオルバーン首相は中立を保ち、ロシアの天然ガスや石油を輸入し続け、国の経済を維持する必要があると述べている。

ハンガリーは天然ガスの85%、石油の60%以上をロシアに依存しており、供給が止まれば危機的状況に陥る可能性が高い。

ウクライナのゼレンスキー大統領は先週のビデオ演説でオルバーン首相を厳しく非難した。「欧州で公然とプーチンを支持しているのは事実上、彼だけだ」

オルバーン首相は勝利演説の中で、野党、国際メディア、EU高官、ジョージ・ソロス氏、そしてゼレンスキー大統領を「フィデス=ハンガリー市民同盟に立ち向かった勢力」と描写した。

2019年10月30日/ハンガリー、首都ブダペストの首相官邸、オルバーン首相とプーチン大統領(Zoltan Mathe/MTI/AP通信)
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