◎EU加盟国は侵略戦争が終わらない限り経済的な痛みを取り去ることはできず、この冬、危機的状況に陥る可能性があると感じ始めている。
2022年9月4日/ドイツ、首都ベルリン、ショルツ首相(中央)と閣僚(Michael Kappeler/ドイツ通信社)

ドイツ政府は4日、ロシアのウクライナ侵攻がもたらしたエネルギー価格の高騰に対処する650億ユーロ(約9兆円)の対策予算案を発表した。

この計画には特定の条件を満たす低所得者への一時金や、エネルギー企業への減税措置などが含まれる予定だ。

ドイツを含む欧州諸国の天然ガス価格はこの半年で大幅に値上がりし、その負担は電力・ガス各社と国民に重くのしかかっている。

ウクライナ政府はEUにロシア産天然ガスから卒業するよう求めている。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は4日、米ABCニュースのインタビューで、「ロシアは全欧州市民の生活を破壊しようとしている」と警告した。

またゼレンスキー氏は定例のビデオ演説でもエネルギー価格の高騰に言及し、「ロシアは全欧州にエネルギー戦争を仕掛けようとしている」と指摘。それに打ち勝つためには欧州の結束が必要不可欠であると訴えた。

ゼレンスキー氏の妻ゼレンスカ(Olena Zelenska)氏も4日に放送されたBBCニュースのインタビューで、「生活費の高騰は厳しいが、ウクライナの市民は水も電気もガスもないなか、命をかけて戦っている」と強調した。

EU加盟国は侵略戦争が終わらない限り経済的な痛みを取り去ることはできず、この冬、危機的状況に陥る可能性があると感じ始めている。

一部の市民はウクライナ支援より自国の問題に集中すべきと主張し始めている。

チェコの首都プラハでは3日と4日、インフレに抗議する極右と極左の合同集会が開催され、数万人が参加した。

ロシアのドイツ向けガスパイプライン「ノルドストリーム1」の終点である北東部ルプミンには数百人のデモ隊が集まり、政府に抗議した。またデモ隊は運開間近だったノルドストリーム2の運用を開始するよう訴えた。

ロシア国営ガスプロム社は今週、このパイプラインの定期点検が遅れているという理由で停止期間を無期限延長した。

ショルツ政権はロシア産天然ガスの供給が完全停止することを想定し、LNG(液化天然ガス)の購入を急いでいる。その貯蔵量は6月時点で50%以下だったが、現在84%に達した。

ショルツ(Olaf Scholz)首相は記者団に対し、「ドイツは冬を乗り切る」と述べ、「ロシアはもはや信頼できるエネルギーパートナーではない」と指摘した。

またショルツ氏は、「政府は年金生活者、給付金受給者、学生に一時金を支払う」とし、電力の小売価格に上限を設けるとした。

連邦議会が予算案を可決すれば、エネルギー企業約9000社に17億ユーロの税制優遇措置がとられる。エネルギー危機の救済に費やされる国費は約1000億ユーロに達する予定だ。

他のEU加盟国も同様の対策を検討している。

イギリスの次期首相であるトラス氏は4日、1週間以内にエネルギー価格の高騰を含む危機に対処する計画を示すと約束した。

NATO加盟を目指すスウェーデン政府も3日国内のエネルギー企業を救済する計画を発表した。

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