◎マクロン政権は平均寿命が伸び、出生率が低下しているため、年金の支払い能力を維持するためには改革が必要不可欠としている。
2023年1月19日/フランス、定年年齢引き上げ計画に抗議する集会(Lewis Joly/AP通信)

フランスのボルヌ(Elisabeth Borne)首相は29日、定年年齢を62歳から64歳に引き上げる政府の計画に「交渉の余地はない」と述べ、労働組合の怒りをかきたてた。

フランス24などによると、全国の主要労組は今週、新たな大規模集会と「ウルトラストライキ」なるストを計画しているという。今月19日に行われた集会には100万人以上が参加した。

年金支給年齢の引き上げはマクロン(Emmanuel Macron)大統領が2017年に初当選した際の公約のひとつであり、昨年の大統領選でも年金改革を推進すると約束していた。

しかし、改革法案は労組の怒りに火をつけ、広範なデモを引き起こし、連邦議会で過半数を保持できていない与党「共和国前進」の悩みの種になっている。

極左政党「不服従のフランス」のメランション(Jean-Luc Melenchon)氏は改革案を破り捨てると誓い、極右「国民連合」のル・ペン(Marine Le Pen)党首は「死んでも賛成しない」と言明した。「マクロンは今すぐ辞任すべきです!」

ボルヌ氏は29日に放送された地元ラジオ局のインタビューで、「交渉の余地はない」と語った。「定年および年金受給開始年齢の引き上げは経団連と労組に意見を聞いたうえでたどり着いた妥協案なのです」

労組が主導するオンライン署名活動はボルヌ氏の発言後、署名数が急増した。AFP通信によると、国内の主要8労組は29日に共同対策会議を開いたという。

改革案に反対する議会議員たちは集会への参加を呼び掛けている。

マクロン政権は平均寿命が伸び、出生率が低下しているため、年金の支払い能力を維持するためには改革が必要不可欠としている。他の先進国も似たような問題を抱えている。

ボルヌ氏はインタビューの中で、「2030年までに財政的にバランスの取れた年金制度を構築する」と約束した。

しかし、労組と左派政党は大企業、億万長者、比較的裕福な家庭に課税すれば年金制度は現状維持どころか改善できると主張している。

ボルヌ氏は出産や教育により一時的に離職した個人の年金支給については、さらなる協議もあり得ると示唆した。

労組は出産や育児で離職せざるを得ない女性が標的にされていると非難しているが、ボルヌ氏はこの主張を否定し、「改革案の分析と調整を進めている」と語った。

改革案は30日に議会委員会に提出され、2月6日から国会で審議される予定。

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