◎マクロン大統領はEU理事会の議長国としてロシア・ウクライナ戦争に対処しており、選挙活動を行っていない。
2022年3月17日/フランス、セーヌ=サン=ドニ県のオーベルビリエ、エマニュエル・マクロン大統領(Thibault Camus/AP通信)

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は17日、セーヌ=サン=ドニ県のオーベルビリエでメディア向けのイベントを開催し、来月の選挙で2期目を勝ち取った場合、経済を活性化し、不平等と戦い、フランスを代表して世界的な危機に立ち向かうという新しい方針を発表した。

マクロン大統領はEU理事会の議長国としてロシア・ウクライナ戦争に対処しており、選挙活動を行っていない。

仏大統領選の第1ラウンドは4月10日に行われる予定。第1ラウンドで過半数を獲得する候補者が出なかった場合は4月24日の決選投票で勝者を決める。

マクロン大統領はイベント後の記者会見で、定年退職年齢を62歳から65歳に段階的に引き上げるという物議を呼んだ年金改革を推進すると約束した。

マクロン大統領は記者団に、「フランスの成長を高めるためにはより多くの投資とより多くの労働力が必要であり、完全雇用を増やすことが重要だ」と語った。フランスの失業率はマクロン大統領の就任以来改善しており、最新の値は2月末時点で7.4%。

またマクロン大統領は、国軍への投資を継続し、学校や医療にアクセスできない人々を助け、不平等を改善すると約束した。

記者から選挙戦のモットーについて聞かれると、「フランス人はより強く、より幸せになる」と答えた。

マクロン大統領はまだ集会を開いておらず、テレビ討論会にも出席しない意向を示している。ここ数日はプーチン大統領との電話会談に20時間近く費やし、ウクライナのゼレンスキーとはほぼ毎日話している。

先週はパリのヴェルサイユ宮殿にEU首脳を集め、対ロシア制裁などについて協議した。フランスはEU理事会の議長国を務めており、マクロン大統領はEUの対応を調整する上で重要な役割を担っている。来週、ブリュッセルで開催されるNATO首脳会議では、ジョー・バイデン大統領らと問題について協議する予定。

マクロン大統領は先日、エリゼ宮殿内でジーンズとパーカーを着て働く珍しい写真を公開した。大統領府によると、写真は深夜に撮影されたもので、大統領は髭を剃っていなかったという。

それが選挙戦略の一環かどうかは分からないが、選挙集会を控え、第三次世界大戦を防ぐために粉骨砕身している姿は有権者の心を見事に捉えたようである。

世論調査機関ELABEのCEOは地元メディアのインタビューの中で、「国際情勢はマクロン大統領の地位を強化している」と述べている。「最新の世論調査によると、ほとんどのフランス人はマクロン大統領に投票するか否かにかかわらず、彼が仕事に適していると考えているようです」

主要メディア・新聞が行っている世論調査はおおむねマクロン大統領が優勢と伝えている。

マクロン大統領は最大のライバルである国民連合のマリーヌ・ル・ペン党首に10%近い差をつけている。両者は決選投票に進む可能性が高く、その場合、マクロン大統領の勝利は固いという見方が示されている。

一方、反イスラム、反ゲイ、反移民を推進している極右のゼムール氏、極左のメランション氏、共和党のペクレス氏の支持率は伸び悩んでいる。

これらのライバル候補たちはマクロン大統領が厄介な国内問題を棚上げし、ウクライナ危機に焦点を合わせて支持率を稼いでいると非難している。

ロシアのクリミア併合を支持していたル・ペン党首は先日放送されたテレビインタビューの中で、「マクロンはフランス人を怖がらせるためにウクライナ戦争を利用し、怖がらせることが自分の利益になると考えている」と述べた。

共和党のペクレス氏は、「戦争が起きると、人々は正統派に走る」と述べている。「人々は作戦を指揮する隊長が必要と考えます......4月に隊長を交代させることを恐れてはいけません」

マクロン大統領の支持者は、ウクライナ情勢はエネルギーや国防政策など、選挙戦で議論されている重要な国内問題に関係していると主張している。

主要メディアと世論調査会社によると、マクロン大統領の最大の課題は、「大統領が圧勝すると思って投票にいかない支持者が増えること」だという。フランス24は戦争の影響で大統領選挙の影が薄くなり、投票率も低くなると予想している。

マクロン大統領も選挙運動用のユーチューブチャンネルに投稿した動画の中でそのリスクを認めている。「私は支持者に伝えたい。もしあなたが結果は分かっている、投票に行かなくても勝つと思っているなら、それは私たちの負けを意味します」

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