◎合意なきブレグジットが現実になった場合、ヨーロッパの労働者、最大70万人の雇用が危険にさらされる可能性がある。
◎マクロン大統領「私たちは欧州委員会の後ろで団結している」とジョンソン首相をけん制。
ロイター通信/アンゲラ・メルケル首相(右)と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長

EU首脳との直接会談で厳しい現実を突き付けられたイギリスのボリス・ジョンソン首相に対し、EU各国の指導者は冷たい態度を取っている。

12月10日のジョンソン首相と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の貿易協定交渉は、世界の注目を集めた。そして、本来であれば、EU各国の指導者たちは会談終了後に何らかの声明を発表する

しかし、12月11日のサミットの中心議題は気候変動、コロナウイルス、トルコとの関係などで、ブレグジットについてはほとんど言及されなかった。

サミット後の個別会見についても同様である。指導者たちはブレグジットの話題をほとんど口にせず、記者から質問されても、「危険な状態」「悪い取引は望まない」「憂鬱な気分になった」などと話す程度だった。

ただし、貿易協定の見通しが立たないことは、EUの心に重くのしかかっている。

ドイツのシンクタンクによると、高い関税と厳しい税関検査などの影響で、ヨーロッパの労働者、最大70万人の雇用が危険にさらされる可能性があるという。

しかし、EUの指導者たちは交渉の行き詰まりに直接介入せず、ただ遠くからじっと様子を伺っている。(舞台裏では交渉担当者との話し合いに関与しているが、公の場でジョンソン首相と顔を合わせることは望んでいない

2020年12月10日 AP通信/フランス北部のブーローニュ=シュル=メール

EUの指導者たちは、「単一市場の完全性を維持しなければならない」と懸念を表明している。

ドイツとフランスの強力な指導者も、「その日が来ることを望まない」と強調した。

BBCニュースによると、エマニュエル・マクロン大統領は10日の交渉失敗および双方の首脳の考えについて、「望ましくない」と厳しい口調で述べたという。

またマクロン大統領は、11日のサミット終了後の記者会見で、「私たちは欧州委員会の後ろで団結している」と述べ、ジョンソン首相をけん制した。

合意なきブレグジットが現実になると、フランスの漁業は大打撃を受ける。

イギリスの豊かな海域で漁を行っているフランスの漁師たちは、オランダやベルギーなどの漁師と漁場を争うことになる。

フランスの漁師、マシュー・ピント氏はAP通信の取材に対し、「戦争が起きる。漁場と漁獲量をめぐる戦争が起きるだろう」と語った。

アイルランドとデンマークの漁業もかなりの影響を受けると予想されている。

EUは2021年1月1日以降の取引に備え、少なくとも半年間、両国間で可能な限りスムーズな貿易を保証する4つの緊急対策を提案した。

漁業権に関しては、「最大1年間、双方の水域にアクセスできることを保証する」と提案している。

なお、イギリスは緊急対策に同意するかどうかについてまだコメントしていない。

2021年1月1日から変わること

・イギリス政府はEU市民に移民システムを適用する。

・旅行規則が変更されるため、双方の市民はパスポートをチェックしなければならない。

・健康保険と運転資格の見直しも必要。

・イギリスはEU予算の支払い義務から解放される。

・双方の企業は取引の際、より多くの事務処理に直面する。

合意なきブレグジットが現実になった場合

・世界貿易機関(WTO)のルールが適用され、貿易に高い関税がかかる

・厳しい承認過程と税関検査が導入される。

厳しい承認過程と税関検査が導入されることで、大型トラックの大渋滞が発生する。生鮮食品の輸送は特に影響を受けやすい。

・イギリスの海域での魚釣りが制限される。また、魚の輸出にも関税がかかるため、漁業関係者は大打撃を受ける。

双方の間で売買する商品の価格が上昇する可能性がある

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