抗議活動のリーダーを拘束

8月30日、ベラルーシの首都ミンスクで10万人規模の大規模な抗議集会が行われた。しかし、ルカシェンコ大統領の専属部隊が高圧的な態度で睨みを利かせていたため、大半の抗議者たちは静かに抗議の声を上げていた。

8月9日の大統領選以降、ベラルーシの混乱は日を追うごとに悪化し、「ヨーロッパ最後の独裁者」ことルカシェンコ大統領および政権の退陣を求める声は強まり続けている。

抗議運動が始まった直後、当局は数千人もの抗議者を捕縛、常軌を逸した拷問が行われた。しかし、これが抗議者、NATO、そしてEUの怒りに触れ、政権に対する風当たりは一層強くなった。

結果、治安部隊による違法な拷問は多少沈静化した。しかし、先日の抗議集会では、再び野党指導者への攻撃が強まった

ソ連国家保安委員会(KGB)の精神を受け継ぐルカシェンコ専属部隊は、東ヨーロッパ最大の工場のひとつ、ソリゴルスク市のカリ工場でストライキを率いていたアナトリー・ボクン氏を拘束した。

ボクン氏は無許可の抗議活動に参加した罪に問われ、15日間の禁固刑を言い渡された。

また8月31日には、ルカシェンコ政権と交渉するために設立された野党調整評議会メンバーを務めるリリア・ブラソワ氏も拘束された。

地元メディアによると、ブラソバ氏は無許可の抗議活動に参加した罪で逮捕されたという。

首都ミンスクでの10万人規模の抗議活動は毎週末に行われている。なお、平日の規模は週末に比べるとはるかに小さく、その間は治安部隊の攻撃も多少沈静化することが確認されている。

当局は首都ミンスク=モヒレフのカトリック大司教であるタデウシュ・コンドルシエヴィチ氏のベラルーシ入国を阻止した。

先週、コンドルシエヴィチ大司教はベラルーシ警察の圧力によりポーランドからの入国を阻止され、「独立広場のカトリック教会は閉じられた」と非難声明を発表した。

30日夜の抗議集会は、3週連続で10万人規模にまで膨れ上がり、1994年から権力を独占し続けるルカシェンコ政権への抵抗が一向に止まないことを印象付けた。

これに対しフル武装した治安部隊は、強固なシールドを構え、装甲車のバックアップを受けながら敵対勢力と対峙した。

大勢の群衆は、ルカシェンコKGBチームが危険極まりない連中であることを重々承知しているため、目の前まで行進するにとどめ、大声で政権の解体および再選挙を要求した。

ウラジーミル・プーチン大統領は、ルカシェンコ大統領を暴力的に排除した場合、ロシアの治安部隊もしくは軍を投入すると強烈な圧力をかけている。30日の抗議集会は、プーチン大統領の圧力発言後、初めて行われた大規模集会だった。

なお、プーチン大統領は、現在の情勢であれば軍の投入を不要と考えており、ドミトリー・ベスコフ大統領報道官も記者団に対し、「今のところ、クレムリンはルカシェンコ政権への支援を考えていないと思われる」とコメントしている。

ベスコフ大統領報道官は、8月31日のオンライン会見で以下のように述べた。

ドミトリー・ベスコフ大統領報道官:
「現在、治安部隊の投入は議論されていない、と重ねてお伝えする。ベラルーシの状況は管理されており、それを話し合う段階にない」

「抗議活動は続いているが、ベラルーシの法執行機関と指導部による統制はうまく機能している。政権への暴力的なクーデターが行われる兆しはないと判断する」

ルカシェンコ大統領への圧力

抗議集会で100人以上が逮捕

クレムリン

ルカシェンコ大統領は野党からの交渉要求を拒否し、憲法改正の可能性について提案している。

先日、ルカシェンコ大統領はベラルーシ最高裁判所長官とテレビ会議で、「司法制度の在り方および、反対勢力を力で封じ込める憲法改正」について議論した。

しかし、抗議集会開催日にアサルトライフルを振り回し、「抗議活動はNATOの侵略計画の一環」と抗議者たちを非難したルカシェンコ大統領の被害妄想を認めるオブザーバーはほとんどいない。

ロシア国際問題評議会のアナリストメンバーを務めるフョードル・ルキャノフ氏は以下のように述べた。

フョードル・ルキャノフ氏:
クレムリンはルカシェンコ大統領の熱狂的な支持者ではない。つまり、プーチン大統領のメッセージは形式的なものであり、指導部が管理された形で変わるのであれば、それを受け入れると思われる」

「ただし、抗議者たちが暴力的な革命を起こせばクレムリンは黙っておらず、クリミアの二の舞になるだろう

「クレムリンにとって、ルカシェンコ大統領は小さな悪でしかない。しかし、中期的な将来を見据え、現時点では彼に賭けるものと思われる」

「クレムリンの仕事はベラルーシ情勢の安定、そして、ルカシェンコ大統領を駒のように動かし続けることである」

8月9日の”不正”選挙で敗れた野党党首のスヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏は、ロシア軍の派遣に強く反対し、平和的な再選挙と現政権の退陣を求めた。

スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏:
「私たちはロシア軍を送り込むと言及したプーチン大統領の声明に危機感を持っている。それが現実になれば、ベラルーシの主権への重大な違反であり、両国の関係に致命的な結果をもたらす」

「危機を脱するためには交渉が必要である。私たちは会談の場を確保するための国際的な援助を歓迎する」

ツィハノウスカヤ氏が避難しているリトアニアおよびラトビアとエストニアのバルト三国は、8月31日にルカシェンコ大統領を含む政権高官計30人の入国禁止を発表、EUに追随を求めた。

ラトビアのエドガーズ・リンケビックス外相はバルト海通信の取材に対し、「ルカシェンコ政権の対応は到底容認できない。そして、そのような行為を指示した指導者たちは、ラトビアでは歓迎されない。我々はEUに対し、同様の措置を迅速に進めるよう要請する」と語った。

ロシアの支援

国連安全保障理事会

9月1日、エストニアの国連大使を務めるスヴェン・ユルゲンソン氏は、リトアニアに避難したツィハノウスカヤ氏が、国連安全保障理事会の非公式会合(9月4日)に出席するとコメントした。

6期目を迎えたルカシェンコ政権に対しアメリカとEUは、「先日の投票は自由でも公正でもない」と非難し、野党との対話を開始するよう求めてきた。

安保理で2年間役員を務めたユルゲンソン氏は、独立した海外メディアの追放と国内外のジャーナリストに対する各種認定の取り消しは、「ベラルーシ国内で異常事態が発生していることを証明する」と述べた。

また、「エストニアにとって、人権の擁護は外交政策の優先課題である。私たちは、抑圧されている人々のための舞台を提供することが重要と考えた」と付け加え、安保理出席の意義を強調した。

スヴェン・ユルゲンソン氏:
「暴力的な紛争と大虐殺の防止は、安保理に課された重要な使命である。大至急、ルカシェンコ大統領への警告と意識改革を求めねばならない」

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